認知症の中核症状と周辺症状(BPSD)に対するリハビリと介入
リハビリ2025-09-10

櫻リハの櫻本でございます🙇♂️
今回は「認知症」についてです❗️
認知症とは、「一度獲得された知的機能が、後天的な脳の機能障害によって全般的に低下し、社会生活や日常生活に支障をきたすようになった状態で、それが意識障害のないときにみられる」と定義されています。
日本では高齢化とともに患者数が増加しており、厚生労働省の推計によると 2025年には高齢者の約5人に1人が認知症 を発症するとされています。
認知症の主な“見分けどころ”

1.アルツハイマー型(AD)
アルツハイマー型認知症において最も中核的な症候は記憶障害とされている。数分前に会話した内容を忘れ、繰り返し尋ねるなどが特徴。また、約束を忘れるなどのエピソード記憶が障害される。物忘れから始まり、徐々に見当識障害や言語障害が進行。アミロイドβとタウタンパクが病態の中心。
2.血管性認知症(VaD)
脳出血、脳梗塞、くも膜下出血などの脳の血管の病気によって引き起こされる。アルツハイマー型認知症と比較して記憶障害は初期にはないかあっても軽いのが特徴。一方で、物事を順序立てて行う機能である遂行機能障害で発症する場合が多い。
3.レビー小体型認知症(DLB)
レビー小体というタンパク質が大脳皮質領域に異常に蓄積するため生じる認知症。病初期の記憶障害は軽度だが、歩行障害を来すパーキンソニズム・幻視・症状の変動性が強く良いときと悪いときの差が大きい動揺性・睡眠時に大声を上げる、歩き回るなど異常行動が出現するなど特徴的な症状を呈する認知症。抗精神病薬に対する過敏性も特徴とされます。
4.前頭側頭型認知症(FTD)
前頭葉や側頭葉が変性し、機能が低下します。その結果、人格変化や行動障害、失語症、認知機能障害、運動障害などが緩徐に進行。自発性の低下や無関心、脱抑制などの社会通念が欠如し、他の人からどう思われるか考えなくなってしまい、自己本位的な行動を起こすなども特徴です。
認知症の周辺症状(BPSD)とは?

認知症の症状は大きく2つに分けられます。
◯中核症状
記憶障害、失語、失行、失認、遂行機能障害など
脳の器質的な障害に直接起因し、基本的に進行に伴って出現
◯周辺症状(BPSD)
中核症状と環境要因・心理要因との相互作用で現れる症状
介護の困難さや家族の負担に直結する
◯主な周辺症状(BPSD)の分類
1.行動症状
徘徊
不潔行為(排泄の失敗、便弄など)
暴言・暴力
常同行為(同じ行動を繰り返す)
夜間せん妄
2.心理症状
物盗られ妄想(財布や通帳を盗まれたと思い込む)
抑うつ気分
不安、焦燥
幻覚(特に幻視)
妄想
睡眠障害
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認知症の評価

認知症のケアでは、医学的診断だけでなく「生活上の困りごと」を把握することが重要です。
代表的な評価ツールには以下があります。
◯MMSE(Mini-Mental State Examination)
記憶力、見当識(時間、場所)、言語能力、計算力、視空間認知能力など、複数の側面を評価。口頭だけでなく、文章の記述や図形を描くなどの行為も含まれます。カットオフ値は30点満点で、23点以下で認知症が疑われる。
◯長谷川式認知症スケール(HDS-R)
MMSEよりも簡便に実施できることが特徴で、特に記憶力に重点を置いた項目で構成されている。すべての回答が口頭で行われ、カットオフ値は30点満点で、20点以下で認知機能の低下が疑われる。
◯ADAS-Cog
アルツハイマー型認知症に用いられるスタンダードな検査法。0点から70点の範囲で、得点が高くなるほど認知機能の障害の程度が重いことを示し、検査には約 40 分前後を要するため、検査を熟知した者が行う必要がある。
◯NPI(Neuropsychiatric Inventory)
BPSD(周辺症状)評価尺度のゴールドスタンダードとされています。主に医療機関で専門家が家族や介護者などに面接して評価する。高い信頼性と妥当性が確認されています。
リハビリ・介入戦略

1.薬物療法
コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル等)、メマンチンなど:中核症状や機能の維持に一定の効果
→ 進行を遅らせる効果はあるが、副作用には注意
2.非薬物療法(リハビリ・ケア)
認知刺激療法(CST):言語課題や見当識、道具使用などのセッションを小集団でグループ療法
運動療法:有酸素運動(歩行・エアロバイクなど)、筋力強化、バランス訓練は認知機能低下予防に有効
音楽療法・園芸療法:感情の安定や社会的交流を促す
環境調整:生活動線の工夫、見やすい掲示、転倒予防の自助具の選定
3.家族・介護者支援
ケア負担の軽減(レスパイトケアや訪問リハビリ)
BPSD(徘徊・暴言・睡眠障害)に対する対応マニュアル
多職種連携(医師・看護・リハ職・介護職)
まとめ
認知症ケアでは「症状の理解」「適切な評価」「個別化された介入」が重要です。
薬物療法だけでなく、運動・認知刺激療法・生活環境の調整 を組み合わせることで、本人の自立支援と介護者の負担軽減につながります。
医療とリハビリ、介護が一体となって取り組むことが、今後ますます求められるでしょう。
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櫻訪問リハビリテーションでは、高齢者施設にご入居の皆さまや施設職員の方々へ、個別リハビリテーションの提供を通じて、施設サービスの質の向上をお手伝いしています。
認知機能の低下により日常生活動作が困難な方にも丁寧に対応させて頂きます。
マッサージやストレッチのみのご利用も可能ですので、お気軽にご相談ください。
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【引用・参考文献】
1)Cummings JL, Mega M, Gray K, et al. The Neuropsychiatric Inventory: Comprehensive assessment of psychopathology in dementia. Neurology. 1994.
3)日本認知症学会『認知症テキスト 改訂版』
6)Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report. The Lancet. 2020.