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脱水と誤嚥性肺炎の深い関係 〜夏場に特に注意したい理由〜

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櫻リハの櫻本でございます。

今回は「脱水と誤嚥性肺炎」について‼️

夏は気温と湿度が高く、発汗量が増えることで体内の水分が失われやすい季節です。特に高齢者や要介護者では、脱水が進行しやすく、その結果として誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが高まります。

一見別々の病態に見える「脱水」と「誤嚥性肺炎」ですが、実は密接に関係しています。本記事では、そのメカニズムと予防のための具体的なポイントをわかりやすく解説します。

脱水とは?

脱水とは、体内の水分と電解質が不足している状態です。高齢者では、のどの渇き感覚の低下や、腎機能の低下による尿濃縮能力の衰えにより、自覚なく進行することがあります。さらに、利尿薬の服用発熱・下痢・嘔吐なども脱水を悪化させる要因です。

誤嚥性肺炎とは?

誤嚥性肺炎は、食べ物や唾液、胃内容物が誤って気管に入り、肺で炎症を起こす病気です。嚥下反射や口腔衛生が低下している高齢者に多く発症し、唾液や咽頭分泌物の不顕性誤嚥が大きな原因となります

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なぜ脱水が誤嚥性肺炎を引き起こすのか?

1. 唾液分泌の減少と口腔乾燥

脱水により唾液の分泌が減少し、口腔が乾燥します。唾液は食塊の形成を助け、細菌を洗い流す作用もあるため、唾液量の減少は誤嚥リスクを高めます。

2. 嚥下筋の機能低下

体液の不足は全身の筋機能を低下させるため、嚥下に関わる舌や咽頭筋の協働運動が弱まります。これが誤嚥しやすい状態を生じさせます。

3. 痰の粘性増加と排出困難

脱水により気道の粘膜が乾燥し、痰がねばりやすくなります。そのため、咳で痰を排出しにくくなり、痰中の細菌が増殖して肺炎を誘発しやすくなります。

4. 不顕性誤嚥の増加

高齢で咳反応や嚥下反射が鈍くなると、唾液や唾液中の細菌を知らずに誤嚥してしまい、不顕性誤嚥が増えます。その結果、肺炎の発症につながる可能性が高まります。

5. 誤嚥性肺炎のバランス理論

誤嚥が肺炎につながるかどうかは、「侵襲(誤嚥された物の性質・量)」と「抵抗(喀出力・免疫力)」のバランスで決まります。誤嚥物が細菌を含む唾液であり、抵抗力が低下していれば、肺炎が発症しやすくなります。

事例から学ぶ:現場での実態

実際の介護現場では、夏場に誤嚥性肺炎による入院者が増えることが観察されています。入院直前には、「水分摂取不足」「尿の濃縮」「口腔乾燥」など脱水症状の前兆が記録されており、脱水状態が嚥下機能を低下させ、それが肺炎の引き金となっていたことがわかります。

介護現場で実践すべき予防ポイント

■ 水分摂取の工夫

「こまめに少量ずつ」意識する(例:1時間ごとに50〜100mL)

経口補水液、味のついた飲料、スープなどバリエーションを持たせる

■ 口腔ケアの徹底

毎食後の歯磨きや義歯の手入れ、舌苔の清掃

唾液腺マッサージやスポンジブラシ、潤滑ジェルの使用で乾燥を予防

口腔内の細菌量を減らすことで誤嚥による侵襲を減少させる

■ 嚥下筋の運動

食前に嚥下体操(パタカラ体操など)を行う

リクライニング車椅子の方は、食事中は顎を軽く引いた姿勢(頸部前屈)で嚥下しやすくする

■ 早期の観察と評価

水分摂取量・尿色・むせの有無などを日々記録

簡易脱水評価表を用いて客観的に状態を把握する

簡易的なものを作ってみました。お試し下さい🙇‍♂️

高齢者やご家族へのメッセージ

脱水も誤嚥性肺炎も、症状が気づきにくく、進行してから重症化するケースが少なくありません。しかし、毎日の「水分補給」「口腔ケア」「嚥下観察」の積み重ねと周囲の気づきが、誤嚥性肺炎の発症を大きく予防できます。

「のどが渇いた」と感じたときにはすでに遅いこともあります。ご家族や介護スタッフの方が、「渇きを感じなくてもこまめに水分をとる習慣」を支援すること。それが、笑顔ある日常を守る鍵になります。

まとめ

◯脱水は唾液分泌の減少、嚥下筋力低下、痰の粘性増加、不顕性誤嚥のいずれも促進し、誤嚥性肺炎のリスクを高める。

◯「侵襲と抵抗のバランス」が崩れることで肺炎を引き起こすため、どちらにもアプローチすることが重要。

◯施設では日常的なケアと早期観察を徹底し、高齢者の健康と生活の質を守りましょう。


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櫻訪問リハビリテーションでは、高齢者施設にご入居の皆さまや施設職員の方々へ、個別リハビリテーションの提供を通じて、施設サービスの質の向上をお手伝いしています。

むせ込みが増えた、元気にご飯を食べたい方にも頸部運動や呼吸を用いた嚥下運動など丁寧に対応させて頂きます。

マッサージやストレッチのみのご利用も可能ですので、お気軽にご相談ください。

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