ワイドベース歩行にアプローチ
リハビリ2025-02-05

櫻訪問リハビリテーションの櫻本でございます。
歩行は日常生活において欠かせない基本動作の一つであり、そのパターンにはさまざまな種類があります。その中で今回は少しマニアック?ニッチな?「ワイドベース・ナローベース歩行」について❗️
※疾患の重症度や一概に当てはまる内容ではないですが、歩容の改善の一助になればと思い書いて行こうと思います🙇♂️
目次
ワイドベース歩行とは?
ワイドベース歩行は、通常よりも歩隔が広い状態で歩行することを指します
歩行時の歩隔が広い(一般的は8.5㎝、20cm以上がワイドベース)
安定性が増すが、エネルギー消費が増加
バランス保持が優先される
速度が疾患の重症度により変化する(安定を得るために速くなる場合もある)

【ワイドベース歩行】
歩隔(両足の間の距離)が広く支持基底面を大きくして、安定性を高める代償動作の一つ
言い換えれば「歩隔の増加」です
静的安定性は高いが、動く時は重心や体幹のブレが大きくなり動的安定性は不安定を呈する場合もある
ワイドベース歩行に関連する疾患
ワイドベース歩行は、以下のような疾患・病態で見られることが多いです
小脳性運動失調:小脳の障害によりバランスを取るために足幅が広くなる。
パーキンソン病の後期症状:バランス障害が顕著になった場合。
末梢神経障害:感覚障害によるバランス保持のため。
筋力低下(特に下肢の抗重力筋):加齢や疾患による影響。
膝・股関節の変形性関節症:疼痛回避や0脚ために広い歩行幅をとる。
ナローベース歩行とは?
ナローベース歩行は、ワイドベースと逆に通常よりも歩隔が狭い状態で歩行することを指します
歩行時の足幅が狭い(約5cm以下)
すり足や足を交差させるような歩行になることがある
安定性が低く、転倒リスクが高まる
速度が低下する場合がある

【ナローベース歩行】
歩隔を狭くして歩行する。支持基底面が狭い為、左右前後の揺れに弱く静的安定性では不安定を呈すが重心が中心に近い為、歩行時などの動く時は安定する。
言い換えれば、「歩隔の減少」
ナローベース歩行に関連する疾患
ナローベース歩行は、以下のような疾患・病態で見られることが多いです
パーキンソン病:すくみ足や小刻み歩行。
痙性対麻痺:下肢の痙縮が強く、歩幅が狭くなる。
大脳基底核障害(特に歩行開始困難の症状)
正常圧水頭症:特徴的な歩行障害(磁石歩行)
ワイドベース歩行へのアプローチ
まず、歩行スピードを上げ動的安定性を得る(代償動作)または、杖や歩行器の使用の検討をする
ですが、歩行時に膝関節を突っ張って歩くような場合など、膝関節や足関節の動きが乏しい場合「ナローベース」での立位運動が有効な場合があります🤔
例えば…
①壁や手すりを使用し両足を揃えて、両膝を前に出すように曲げる運動を繰り返す。
②①の運動時に交互に足を曲げる(片足ずつ)その際に膝を曲げる時に、足関節をかかとを上げる(つま先立ち)
③壁や手すりを使用し両足を揃えて、両膝を曲げながら膝を回す運動を繰り返す。左右回転行う
④片手を壁や手すりに手をつき、かかとを上げながら足を後方へ滑らす
⑤④が慣れてきたら、後ろ歩きを行う。その際はつま先から地面につき、かかとを下ろす
スクワットに似た動作や後ろ歩きを練習する事で、関節・足関節の動きを促していくと、歩隔の減少が期待できます。


その他の有効な運動療法
ワイドベース歩行を改善するためには、バランス能力や筋力強化を目的とした運動療法が有効です
体幹・下肢の筋力強化(スクワット、片脚立ち)
バランストレーニング(バランスボード、片脚立ち)
歩行トレーニング(地面にテープで狭い幅を作り、その上を歩く)
ナローベース歩行練習(狭い支持基底面での動的安定性を向上)
動的バランストレーニング(不安定な床面での歩行練習)
膝・足関節の適切な運用促進エクササイズ(足関節背屈・底屈運動、ニーアップ歩行、足趾グリップ運動)
前述しましたがワイドベース歩行の人は膝・足関節の動きが制限されていることが多いため、ナローベース歩行を利用したリハビリテーションを行うことで、これらの関節の適切な可動性を引き出すことができます❗️
まとめ
ワイドベース歩行とナローベース歩行は、それぞれ異なる疾患や身体的要因によって生じる歩行パターンです。ワイドベース歩行の方は安定性を求める一方で、エネルギー消費が高くなりやすく、ナローベース歩行の方は歩幅の狭さから転倒リスクが高まります。自助具を使用する事や適切な運動療法を取り入れることで、歩行パターンを改善し、日常生活での移動能力を向上させることが可能です。
また、疾患だけでなく股関節・膝関節の変形性関節症が隠れている場合もあります。リハビリの前にはストレッチで筋肉の柔軟性出しながら関節への負荷を軽減する事で歩容の改善も期待できます❗️
【引用・参考文献】
1)Perry J, Burnfield JM. Gait Analysis: Normal and Pathological Function. SLACK Incorporated; 2010.
2)Winter DA. Biomechanics and Motor Control of Human Movement. Wiley; 2009.
3)栗原敏, 福田隆. 歩行分析とリハビリテーション. 医歯薬出版; 2015.
4)中村隆一, 高橋雅士. リハビリテーション医学. 南江堂; 2020.