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筋トレよりヨガが効く?膝の痛みに対するヨガ療法の効果を最新RCT(ランダム化比較試験)で徹底解説【2025年版】

リハビリ

櫻リハの櫻本でございます🙇‍♂️

さて今回は「変形性膝関節症にヨガは効果があるのか⁉️」です❗️

1. 変形性膝関節症(膝OA)とは — 日本の「膝問題」の現状

1-1. 推定患者数2,530万人の国民病

変形性膝関節症(以下、膝OA)は関節軟骨のすり減りによって膝に痛みや変形が生じる疾患で、日本における有病率は非常に高く、40歳以上の潜在患者数は約2,530万人(男性860万人・女性1,670万人)と推定されています(ROAD研究、2009年)

厚生労働省は自覚症状を有する患者数を約1,000万人、X線診断も含む潜在患者を約3,000万人と推計しており、高齢化の進行に伴い患者数は年々増加し続けています(厚生労働省平成20年「介護予防の推進に向けた運動器疾患対策について報告書」)。

60歳以上を対象としたROAD研究では、変形性膝関節症の有病率は男性47.0%、女性70.2%にのぼり、とりわけ女性のリスクは男性の1.5~2倍と高く、閉経後のエストロゲン低下が関節炎症の抑制機能を弱めることが一因と考えられています。

1-2. 変形性膝関節症の病態と症状

膝OAは関節軟骨の変性・消失に始まり、軟骨下骨の硬化・骨棘形成・関節包の線維化・滑膜炎を伴う慢性疾患です。

病期(KL分類)X線所見主な症状
Grade 0〜1(初期)軟骨の軽微なすり減り安静時は無症状。動き始めに違和感
Grade 2〜3(中期)骨棘形成・関節裂隙狭小化歩行時痛・階段昇降困難・腫脹
Grade 4(末期)関節裂隙消失・骨変形安静時痛・O脚変形・日常生活困難

1-3. 保存療法の中心は「運動療法」

日本整形外科学会「変形性膝関節症診療ガイドライン2023」では、保存療法として運動療法・患者教育・体重管理が明確に推奨されています。運動療法の推奨グレードはA(強く推奨)、エビデンスレベル2であり、薬物療法や注射療法と並ぶ主要な治療手段として位置付けられています。

しかし従来の運動療法は主に大腿四頭筋強化(筋力トレーニング)が中心であり、「どの種類の運動が最も効果的か」については十分なエビデンスが蓄積されてきませんでした。そのような状況で注目を集めているのがヨガです。

2. 最新RCT全解説 — JAMA Network Open 2025年4月掲載

📄論文情報

著者:Abafita BJ et al.(オーストラリア・タスマニア大学)

誌名:JAMA Network Open 2025;8(4):e253698

DOI:10.1001/jamanetworkopen.2025.3698

デザイン:評価者盲検ランダム化優越性試験(RCT)

実施地:オーストラリア・タスマニア州

発表:2025年4月8日

2-1. 研究の背景と目的

ヨガはマインドフルネス・柔軟性・ウェルビーイングを高めることで疼痛軽減が期待できる運動ですが、膝OAに対するヨガの有用性を示す質の高いエビデンスはこれまで限られていました。

研究グループは「ヨガは筋力増強トレーニングよりも膝OA患者の膝関節痛を緩和し、身体機能やQOLを改善する運動として有用である」という仮説を立て、世界初の大規模RCTを実施しました。

2-2. 対象・方法

項目詳細
対象患者タスマニア州の膝OA患者117名(40歳以上)
参加条件VAS膝痛スコア 40mm以上(0〜100mm)の中等度以上の疼痛を有する
群分けヨガ群(59名)vs 筋力増強トレーニング群(58名)に1:1で無作為割付
前半12週間週2回の指導下対面セッション + 週1回の在宅プログラム(両群共通)
後半12週間週3回の在宅プログラム(指導者なし)(両群共通)
評価時点12週間後(主要評価)・24週間後(副次評価)
主要アウトカム12週時点のVAS膝痛スコアの群間差

2-3. ヨガ・筋トレプログラムの内容

ヨガ群のプログラム(主要ポーズ)

  • 山のポーズ(タダアーサナ):姿勢・バランス訓練
  • 椅子のポーズ(ウトカタアーサナ):大腿四頭筋強化
  • 戦士のポーズ(ヴィーラバドラアーサナ I・II):股関節周囲筋強化
  • 橋のポーズ(セトゥバンダアーサナ):殿筋・ハムストリングス強化
  • 杖のポーズ(ダンダアーサナ):姿勢改善・体幹安定化
  • 屍のポーズ(シャバアーサナ):リラクゼーション・マインドフルネス

筋力増強トレーニング群のプログラム

  • 大腿四頭筋セッティング(膝伸展等尺性収縮)
  • ミニスクワット(0~30度屈伸)
  • ストレートレッグレイズ(下肢伸展挙上)
  • ステップアップ・ダウン(段差昇降)
  • カーフレイズ(踵挙上)

3. 研究結果 — ヨガはどこまで効果があったか

3-1. 主要アウトカム:膝の痛み(VASスコア)

12週間後の膝痛VASスコアは両群ともに有意に改善しました。ヨガ群・筋トレ群のいずれも、治療開始前と比較して統計学的に有意な疼痛軽減を示しました。

一次アウトカムである群間差については有意差は認められなかったものの、これは「ヨガが筋トレに劣らない」ことを意味しており、筋トレのみが推奨されてきた従来の考え方を大きく塗り替える結果となりました。

3-2. 副次アウトカム:機能・QOL・うつ症状

評価項目ヨガ群筋トレ群(比較)
WOMACスコア(機能・硬直)有意に良好な改善 ✅改善あり(ヨガより劣る)
健康関連QOL(AQoL-8D)24週後にヨガ群が有意に優位 ✅改善あり(ヨガより劣る)
うつ症状(PHQ-9)−1.1ポイント有意改善 ✅有意差なし
継続率(在宅プログラム)70.2%と高い継続率 ✅比較的低い
安全性(有害事象)軽度(ポーズ中の一時的痛み)軽度(膝痛の一時的悪化)

💡この研究のポイント

ヨガは「痛みを取る」だけでなく、「うつを改善する」「QOLを高める」

「継続しやすい」という多面的な効果が明らかになりました。

特に、精神面への効果(PHQ-9の有意改善)は筋トレには見られず、

ヨガが心身一体のアプローチとして優れていることを示しています。

4. ヨガが膝OAに効く3つのメカニズム

4-1. メカニズム①痛みの神経科学的調整(中枢性感作の抑制)

慢性的な膝OAでは、脳や脊髄が痛みに対して過敏になる「中枢性感作」が生じています。ヨガのマインドフルネス・呼吸法・瞑想的要素は、前帯状回や島皮質などの痛み処理領域の活動を調整し、疼痛閾値を高めることが神経科学的研究で示されています。

また、ヨガは副交感神経を優位にすることで、交感神経優位による疼痛増幅を抑制し、炎症性サイトカイン(TNF-α・IL-6)の産生低下にも寄与することが報告されています。

4-2. メカニズム②筋骨格系への複合的アプローチ

筋トレが「大腿四頭筋の筋力強化」という単一のアプローチに特化しているのに対し、ヨガは以下の複数の要素を同時に改善します。

  1. 大腿四頭筋・殿筋・体幹筋の筋力強化(静的・動的)
  2. 股関節・膝関節・足関節の柔軟性向上
  3. 固有受容感覚(プロプリオセプション)の改善
  4. 動的バランス能力の向上(転倒リスクの低下)
  5. O脚・X脚の代償的な姿勢アライメント改善

4-3. メカニズム③心理・行動的メカニズム

膝OAの疼痛は「破滅的思考(カタストロフィング)」と強く関連しており、「動くと悪化する」という恐怖回避信念が運動量の低下→廃用→疼痛増悪の悪循環を生みます。

ヨガのマインドフルネス要素は破滅的思考の認知的再構成を促し、「自分の体を大切に動かす」という自己効力感を高めます。さらに集団ヨガのプログラム形式は社会的つながりによる疼痛緩和(オキシトシン分泌促進)にも寄与します。

5. リハビリ職・医療者への臨床応用

5-1. ガイドラインにおけるヨガの位置付け

5つの主要な変形性膝関節症ガイドライン(NICE 2022・AAOS 2021・VA/DoD 2020・OARSI 2019・ACR/AF 2019)を整理した文献(日本理学療法科学誌、2023)によると、教育・運動療法は強い推奨がある一方、ヨガについては「ガイドライン間で推奨が一致していない」状況でした。

今回の2025年RCTはこの状況を大きく変える可能性を持つ「質の高いエビデンス」であり、今後のガイドライン改訂においてヨガがより明確に位置付けられることが期待されます。

5-2. どの患者にヨガを推奨すべきか

ヨガが特に適している膝OA患者

・慢性的な疼痛と抑うつ感を合併している患者

・「動くのが怖い」「運動で悪化した」という恐怖回避信念がある患者

・従来の筋トレプログラムに飽き・ドロップアウト歴がある患者

・体重管理と全身的な柔軟性改善を同時に希望する患者

・グループ活動への参加意欲があり社会的孤立がある患者

・Grade 1〜2の初中期〜中期(末期には動作確認が必要)

⚠️ヨガを慎重に適用すべきケース

・急性炎症期(関節腫脹・熱感・発赤が著明な時期)

・膝関節可動域が著しく制限されている末期膝OA

・重篤な心疾患・高度の骨粗鬆症を合併している場合

・バランス障害が重度で転倒リスクが高い高齢者

→ これらのケースでは段階的な導入、動作修正、補助具の活用を検討

5-3. 実際のヨガプログラム導入の手順

  1. 理学療法士または医師による初期評価(可動域・筋力・バランス・疼痛VAS)
  2. 膝OA向けの修正ポーズ(椅子を使用・補助ブロック活用)から開始
  3. 前半は週2~3回の対面指導(グループまたは個別)
  4. ホームプログラムとして動画・テキストを提供し自宅継続を促す
  5. 4~6週ごとに疼痛VAS・WOMAC・PHQ-9で効果を評価・調整

6. 実践!膝OA向けヨガポーズ6選

⚠️実施前の注意事項

・急性増悪期(腫れ・熱感が著明な時期)は控えてください

・各ポーズは痛みを感じる手前で止め、無理な可動域は避けてください

・初めての方は医師・理学療法士の指導下で実施することを推奨します

・椅子を使った「チェアヨガ」バリエーションも各ポーズに設定可能です

ポーズ名方法・効果・注意点
①山のポーズ (タダアーサナ)方法:両足を腰幅に開いて立ち、全身を一直線に。肩甲骨を引き下げ、体幹を意識して30秒〜1分保持 効果:姿勢改善・体幹筋活性化・固有受容感覚の向上
②椅子のポーズ (ウトカタアーサナ)方法:足を腰幅に開き、腕を前方に伸ばしながら膝を曲げ椅子に座るような姿勢を10〜20秒保持(膝が痛い場合は浅めに) 効果:大腿四頭筋・殿筋・体幹筋の同時強化
③橋のポーズ (セトゥバンダ)方法:仰臥位で膝を立て、お尻をゆっくり持ち上げ10〜15秒保持→ゆっくり下ろす。5〜10回繰り返す 効果:殿筋・ハムストリングス・多裂筋の強化。膝への負担が少なく安全
④杖のポーズ (ダンダアーサナ)方法:床に座り両足を前方に伸ばし背筋を立てる。両手は腰横の床に置き1〜2分保持 効果:姿勢保持筋の活性化・大腿前面のストレッチ・足首の背屈柔軟性改善
⑤猫と牛の ポーズ(合同)方法:四つ這い位で息を吸いながら背中を反らし(牛)、吐きながら丸める(猫)。8〜10回ゆっくり繰り返す 効果:脊柱柔軟性改善・呼吸との同調によるリラクゼーション
⑥屍のポーズ (シャバアーサナ)方法:仰臥位で全身を脱力し、腹式呼吸に意識を向けながら5〜10分リラックス 効果:副交感神経優位化・疼痛感受性の調整・炎症性サイトカイン低減

7. よくある質問(Q&A)

ヨガは膝に悪くないですか?

適切に行えば膝OAに安全です。今回のRCTでも、ヨガ群の有害事象は軽度(主にポーズ中の一時的な膝痛の悪化)であり、深刻な有害事象は報告されていません。急性炎症期を避け、疼痛が増強しない範囲で実施することが重要です。

ヨガ未経験ですが始められますか?

はじめられます。今回のRCTの参加者はヨガ未経験者も含まれており、指導者付きの対面セッションから始めることで安全に導入できます。椅子を使った「チェアヨガ」は立位バランスに不安がある方にも安全です。

筋トレとヨガはどちらを選べばいいですか?

どちらも有効です。今回のRCTでは両群ともに疼痛が改善しました。痛みを早期に緩和し運動への恐怖を軽減したい方・うつ傾向がある方・継続率を高めたい方にはヨガが特に適しています。関節の安定性・筋力を集中的に強化したい場合は筋トレとの併用も有効です。

どのくらいの頻度で行えばいいですか?

今回のRCTでは前半12週は週3回(対面2回+在宅1回)、後半12週は週3回(在宅のみ)という設定で効果が確認されています。在宅での継続率が70.2%と高かったことも、ヨガの実践しやすさを裏付けています。まずは週2~3回から始めることを推奨します。

人工膝関節術後(TKA後)でもヨガはできますか?

術後の経過・主治医の判断によりますが、一般的にTKA後3~6ヶ月を過ぎて可動域が安定していれば、修正ポーズ(深屈曲を避けるなど)での実施が可能なケースも多いです。必ず主治医・担当理学療法士に相談のうえ開始してください。

8. まとめ — 膝OA治療にヨガという新たな選択肢

2025年4月にJAMA Network Openに掲載されたRCTは、ヨガが従来の筋力トレーニングと同等以上の効果を膝OA患者にもたらすことを示した画期的な研究です。

  • ヨガは膝の痛み・身体機能・QOL・うつ症状をいずれも改善する
  • 継続率が高く、在宅でも実践しやすい
  • 単なる「運動」ではなく心身一体の治療アプローチである
  • 筋トレとの組み合わせでさらなる相乗効果が期待できる

変形性膝関節症は「一生付き合う疾患」ではありますが、適切な治療・運動療法によって痛みをコントロールし、豊かな生活を続けることは十分に可能です。「膝が痛いから動けない」ではなく、「膝のために動く」という考え方への転換が、リハビリ医療の重要な役割です。

今日できるアクション3

① 整形外科・リハビリ科に受診し膝OAの重症度(KL分類)を確認する

② 理学療法士に「ヨガを取り入れたいが適応があるか」相談する

③ 地域の「ひざ痛ヨガ教室」「チェアヨガクラス」の情報を収集する

 (日本理学療法士協会のホームページから地域の専門家を検索可能)


お問い合わせ・ご相談はこちらから

櫻訪問リハビリテーションでは、高齢者施設にご入居の皆さまや施設職員の方々へ、個別リハビリテーションの提供を通じて、施設サービスの質の向上をお手伝いしています。

変形性膝関節症で歩きづらい、痛みがお悩みのご入居者様でも丁寧に対応させて頂きます。

マッサージやストレッチのみのご利用も可能ですので、お気軽にご相談ください。

詳しいご説明やご相談は、どうぞお気軽にお問い合わせください🙇‍♂️

また、LINEでの相談窓口がございます。無理な営業やこちらからの勧誘は行いません。

必要な方が、必要なタイミングで相談できる場所として使っていただければ幸いです。

下記のお問い合わせからもご相談承っております。


【引用・参考文献】

1)Abafita BJ, et al. Yoga vs Resistance Training for Knee OA. JAMA Network Open. 2025;8(4):e253698.  https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2832290

2)CareNet「膝OA患者のアウトカム改善、筋トレvs. ヨガ」(2025年4月)  https://www.carenet.com/news/general/carenet/60547

3)成尾整形外科病院「膝の痛みを改善するにはヨガ?筋トレ?最新研究でわかった意外な結果」(2025年)  https://naruoseikei.com/blog/2025/04/KneeOA-Yoga.html

4)成尾整形外科病院「膝の痛みを和らげる運動はどっち?ヨガvs筋トレの効果を比較した研究結果」(2025年)  https://naruoseikei.com/blog/2025/05/yoga-kneeOA.html

5)メディカルオンライン「変形性膝関節症管理におけるヨガと筋力強化運動の有効性比較」(2025年)  https://www.medicalonline.jp/review/detail?id=12891

6)日本関節病学会「変形性膝関節症基本情報」  https://jsjd.info/archives/815

7)Yoshimura N, et al. ROAD研究(変形性膝関節症疫学). J Bone Miner Metab. 2009;27(5):620-628.  https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19410032/

8)日本生活習慣病予防協会「ロコモティブシンドロームの国内推計患者数は4,700万人」(2024年)  https://seikatsusyukanbyo.com/statistics/2024/010811.php

9)日本理学療法科学誌「5つの変形性膝関節症診療ガイドラインによる理学療法エビデンス」(2023年)  https://www.jstage.jst.go.jp/article/jmpt/23/1/23_75/_article/-char/ja/

10)リペアセルクリニック「変形性膝関節症のガイドラインに基づいた運動療法」(2025年)  https://fuelcells.org/topics/15511/

11)日本WHO協会「変形性関節症(世界有病率・疫学)」  https://japan-who.or.jp/factsheets/factsheets_type/osteoarthritis/

12)日本理学療法士協会「理学療法ハンドブックシリーズ7 変形性膝関節症」  https://www.japanpt.or.jp/about_pt/asset/pdf/handbook07_whole_compressed.pdf