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週1回のリハビリテーションで最大限の改善を達成する方法

リハビリ

櫻リハの櫻本でございます🙇‍♂️

今回は「週1回のリハビリで効果はあるのか?」です‼️

リハビリテーションを提供する上で、介入頻度はしばしば重要な論点となる

「リハビリは毎日やらないと意味がない
週1回だけで改善なんて無理では?」

この状況に直面した患者様やご家族様、そして専門職の中に懸念を持つ声を多く聞く言葉です。

確かに理想的な頻度は週2~3回以上とされることが多いものの、在宅介護・自費リハビリ・通所環境では「週1回」が現実的な上限となるケースも少なくありません。

しかし、このような「頻度が低い=効果が薄い」という先入観は、科学的な視点から見ると必ずしも正確ではありません。リハビリテーションの成果を決定づける要因は、治療者が患者に直接手を加える時間だけでなく、患者の日常生活全体における「総運動量(Total Exercise Volume)」と「運動負荷の質」に強く依存します。

週1回の対面リハビリは、単なる訓練提供の場ではなく、患者が残りの6日間で最大限の成果を出すための「評価、戦略立案、超最適化された運動処方、そして行動変容のコーチング」を行う戦略的マネジメントの場として再定義されなければなりません。この戦略的転換こそが、低頻度の制約を乗り越え、改善という目標達成を可能にする鍵となります。

科学的根拠に基づく柱

週1回のリハビリテーションでも最大限の改善を追求するための、科学的根拠に基づいた多角的な介入戦略を提示します。成功に向けた戦略は、以下から構成されます。

頻度非依存性の原則を活かした超最適化された個別運動処方: 毎週のセッションを通じて、自宅訓練の強度と用量(量)を漸進的に高める戦略。

継続を可能にする行動変容ステージモデル(TTM)の活用: 患者の心理状態を把握し、自主トレーニングのアドヒアランス(継続)を科学的に支援する戦略。

 科学的根拠の検証:頻度に関する最新のエビデンスと解釈

1.頻度と機能アウトカムに関する最新のエビデンス

特定の慢性疾患領域における最新のシステマティックレビューは、週1回モデルでも成功しうる科学的な根拠を提供しています。

例えば、パーキンソン病(PD)患者を対象とした46件のランダム化比較試験(RCTs)、合計3905人の患者データを統合したシステマティックレビューおよびメタアナリシスでは、運動のアウトカム(歩行、バランス、運動機能)に関して、標準的な理学療法の頻度と非標準的な頻度の間で有意な差は見られなかったと結論づけられています 。   

このレビューでは、多くの試験でPTが週2回または週3回の頻度で実施されていたことが示されていますが 、これらの頻度が他の頻度(低頻度や高頻度)に対して統計的に優位性を持つという結果は示されませんでした。全体として、パーキンソン病における理学療法の最適なタイプ、タイミング、頻度、期間、そして効果の持続性に関するデータは依然として不足しており、異なるケアモデルの比較有効性は未確定であると指摘されています 。   

この知見は、リハビリ専門職に対し、特定の疾患においては、週あたりの頻度が絶対的な効果を決定づける要因ではない可能性が高いことを示唆します。もし頻度が効果を決定づける主要因であれば、週2〜3回実施したグループが明らかに優位性を示すはずです。しかし、それが示されなかったということは、セッション回数よりも、治療期間全体で患者に提供された累積的な運動負荷量(自主トレーニングを含む)のほうが、機能的アウトカムに強く影響している可能性が高いことを意味します。この「頻度非依存性の原則」は、週1回モデルの成功を目指す上での科学的基盤となります。

2.週1回セッションにおける「介入の質」

週1回という資源が限られた状況では、提供される介入の「質」に対する厳格な監査が求められます。この「質の義務(Quality Imperative)」の重要性は、筋骨格系疾患に関する臨床実践のデータからも裏付けられます。

ある研究では、筋骨格系疾患に対する理学療法の臨床現場を監査した結果、患者が受けた治療のうち、27%がガイドラインで非推奨とされている治療であり、45%が推奨がない治療であったという衝撃的なデータが示されています 。臨床家へのアンケート調査でも、43%が非推奨の治療を選択し、81%が推奨がない治療を選択している実態が明らかになりました 。   

この事実は、リハビリテーションの効果を最大化するためには、専門職がガイドラインやシステマティックレビューで強く推奨されている治療をより高い頻度で提供し、非推奨あるいは推奨がない治療の使用を減らすことが重要であることを示唆しています 。週1回という介入機会が極めて限定的なモデルにおいて、根拠の薄い介入や非推奨の治療に時間を費やすことは、患者の改善機会を著しく損失させることにつながります。   

したがって、低頻度モデルにおけるリハビリ専門職の倫理的な責任として、提供するサービスのエビデンスレベルの厳格な向上が義務付けられます。限られた時間を評価、運動指導、そして科学的根拠に基づく行動変容支援に集中させることで、介入の「密度」を最大化することが、週1回モデルの成功の前提条件となります。

週1回リハビリテーションを成功させる介入戦略の多角化

週1回のリハビリテーションを、単なる「サービス提供」で終わらせず、「戦略的マネジメント」として機能させるために、以下の戦略を多角的に展開する必要があります

1.最適化された個別運動処方(高強度・高用量戦略)

週1回のセッションで身体機能の改善を達成するためには、「現状維持」を目的とした運動処方では不十分です。改善を促すためには、生理学的な過負荷の原則(Principle of Overload)に基づき、身体に適応を強いるに足る高強度かつ高用量の運動を提供し、それを残りの6日間で継続させることが必須です。

週1回のセッションの役割は、自宅で行う自主トレーニングを「自己流の運動」ではなく「治療レベルの運動」に引き上げることです。

目標設定の厳格化: 運動の目標を「痛みの緩和」や「軽く動かす」といった抽象的なものから、「特定のADL能力の向上(例:5分連続歩行)」や「転倒リスクの客観的減少(例:TUGテストのタイム短縮)」など、機能的かつ客観的な指標に結びつけ、患者と共有します。

負荷の漸進的調整: 週1回の対面セッションでは実行状況(データモニタリングの結果があればそれを活用)を詳細に評価し、その場で運動強度(負荷、回数、セット数、時間)を微調整します。単なる維持ではなく、毎回、少しずつ負荷を高める指導を徹底することで、継続的な身体適応を促します。

機能的な運動の優先: 根拠の薄い物理療法や受動的な手技に時間を費やす代わりに、その時間を高強度の機能的運動の指導と練習に充てます。これは、セッション時間の「密度」を高めるための義務です。

2.アドヒアランス(継続)を科学する行動変容戦略

週1回モデルの成否は、自主トレの総運動量に依存するため、患者が自発的に、かつ継続的に運動に取り組む「アドヒアランス」の確保が最重要課題です。リハビリテーション専門職は、運動指導者であると同時に、行動科学に基づいた行動変容のコーチでなければなりません。

この課題を解決するために、行動変容ステージモデル(Transtheoretical Model, TTM)の適用が不可欠です。TTMでは、人が行動を変える過程を「無関心期」から「維持期」までの5つのステージに分類し、患者が現在どのステージにいるかに応じて、適切な働きかけを行うことが推奨されています 。   

週1回という限られた介入機会では、間違ったステージに間違った介入を行うと、貴重な時間資源が浪費されます。例えば、運動の必要性を感じていない「無関心期」の患者に対して、実行期に適用すべき「ご褒美(強化マネジメント)」を提案しても効果は得られません。したがって、週1回セッションの最初に、患者の現在の行動変容ステージを正確に把握するステージ診断のプロセスは、運動処方と同じくらい重要となります。

TTMに基づき、週1回セッションにおいて重点的に実施すべき戦略は以下の通りです 

TTMに基づくステージ別戦略

行動変容ステージ患者の心理状態(例)週1回セッションでの介入戦略(働きかけ)適用される行動変容プロセス/根拠
無関心期運動の必要性を感じていない意識の高揚(メリット周知)、感情的経験(「このままではまずい」という気づきを促す)感情的経験、意識の高揚 
関心期必要性は認識するが、行動開始に躊躇自己の再評価(理想の自己イメージと現実の比較)と環境の再評価自己の再評価、環境の再評価 
準備期運動開始の意図あり(1か月以内)自己の解放(自信の付与、周囲への宣言)、具体的な目標設定と計画策定自己の解放 
実行期運動を開始したが、6ヶ月未満で不安定強化マネジメント(ご褒美の適用)、援助関係(家族・友人からのサポート活用)、刺激の統制強化マネジメント、援助関係、刺激の統制 
維持期6ヶ月以上継続し習慣化行動置換(健康的な代替行動の定着)、逆戻り(Relapse)防止策の確認行動置換 

行動変容は、順調に進むとは限らず、いったん「実行期」や「維持期」に入った後でも、行動変容前のステージに戻ってしまう「逆戻り」の現象も起こり得ます 。週1回セッションでは、この「逆戻り」の兆候を早期に捉え、非難せずに再開計画を立てるサポート(援助関係)を行うことが重要です。

疾患別ケーススタディ:週1回介入モデルの適用

1.ケーススタディ1:慢性疼痛疾患(例:慢性腰痛)

◯課題: 慢性疼痛患者は、痛みに対する過剰な恐怖回避行動(Kinesiophobia)により、運動強度を上げられず、十分な総運動量を確保できないことが多いです。

◯週1回介入の要点: 運動負荷を漸進的に高めることに焦点を当てるとともに、痛みの理解に関する認知行動的な介入(疼痛教育)を徹底します。

具体的な運動処方と戦略

1.認知行動介入: 痛みが必ずしも身体の損傷と一致しないこと、安全な運動が回復に不可欠であることを、科学的根拠に基づき説明します。

2.高強度機能的運動の段階的指導: 週1回の対面では、最も負荷の高い運動(例:スクワット、体幹安定化運動)の正しいフォームと、安全な負荷の上げ方(過負荷の原則)を徹底的に指導します。

2.ケーススタディ2:神経変性疾患(例:パーキンソン病)

◯課題: 疾患特有の運動緩慢や運動開始困難があり、高頻度かつ高強度の訓練が効果的とされる疾患です。週1回の制約は大きな壁となります。

◯週1回介入の要点: 頻度に関する最新のエビデンス  に基づき、質(高強度)と自宅での総運動量を重視する戦略を採用します。   

具体的な運動処方と戦略

1.高強度運動の優先: 可能な限りの高強度有酸素運動と、運動学習に必要な代償戦略(例:大きなステップ、視覚的・聴覚的キューの利用)の習得に週1回のセッション時間を集中的に割きます。

2.TTMの実行期戦略の徹底: パーキンソン病患者は運動開始が困難になりがちであるため、「刺激の統制」(例:運動開始の時間をスケジュール化し、その直前に音楽を流す)や「強化マネジメント」を重視し、自主的な運動の維持を科学的にサポートします 。   

まとめ

週1回のリハビリテーションは、一見すると効果を制限する要因に見えますが、本質的には、リハビリテーション専門職が「訓練提供者」から「健康行動マネージャー」へと役割を転換する機会となります。頻度が低いからといって、改善を諦める必要は一切ありません。重要なのは、対面セッションの時間の使い方を最適化し、患者の日常生活全体を包括的にマネジメントすることです。

リハビリテーションの成果は、治療者が手を加えている時間よりも、患者が自宅で行う総運動量に大きく左右されます。週1回モデルでは、治療者の役割は総運動量を最大化するための戦略立案とコーチングにシフトします。

この未来像において、リハビリ専門職は、個々の患者の行動変容ステージを正確に診断し、個別化されたフィードバックを提供し、患者の自己効力感を高めることに注力します。週1回のリハビリテーションは、患者が自身の身体と健康を自律的にコントロールするための知識とツールを獲得する、「患者の能力を引き出す機会」であると捉えるべきです。


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