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10年ぶりの改訂!厚労省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」──歩行8,000歩と週2回運動の実際と臨床応用

リハビリ

櫻リハの櫻本でございます。

さて今回は「歩行8,000歩と週2回運動」についてです❗️

2024年1月、厚生労働省は「健康づくりのための身体活動基準2013」を10年ぶりに改訂し、新たに「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を発表しました。
この改訂では、「歩行を中心とした日常生活での身体活動」が改めて健康づくりの根幹と位置づけられています。

ウォーキングは特別な道具を必要とせず、誰もが取り入れやすい運動です。そのため、成人だけでなく、高齢者や疾患を抱える方々にも推奨しやすい「最も汎用性の高い運動」と言えます。

歩行がもたらす全身への効果

1.循環器系への効果

中強度のウォーキングは血圧を下げ、心拍変動を改善し、動脈硬化の進行を予防します。

1日30分以上の速歩習慣は心筋梗塞や脳卒中リスクを約20〜30%低下させると報告されています。

2.運動器への効果

筋肉(特に大腿四頭筋や殿筋群)、骨密度、関節可動域の維持に効果的です。

骨粗鬆症予防や変形性関節症の進行抑制にも役立ちます。

3.代謝系への効果

糖代謝が改善し、糖尿病予防や血糖コントロールに寄与。

脂質異常症の改善や肥満防止にも効果的です。

4.神経・認知機能への効果

有酸素運動は脳由来神経栄養因子(BDNF)の分泌を促進し、認知症予防に有効。

高齢者では「歩数+速歩き」が認知機能維持と関連します。

5.精神的効果

ストレスホルモンを減らし、睡眠改善や抑うつ症状の軽減につながります。

特に屋外でのウォーキングは「グリーンエクササイズ」として気分改善効果が高いとされています。

成人と高齢者の日々の活動量:歩行目標の違い

対象強度目安推奨頻度・時間歩数目安
成人中等度(3 METs以上)1日60分以上
(週23 METs・時以上)
約8,000歩/日
高齢者同上1日40分以上
(週15 METs・時以上)
約6,000歩/日

※METs(メッツ)とは?

Metabolic Equivalent of Task(運動強度の単位) の略です。

→安静に座っている状態」を 1 METs として基準にします。

→散歩(ゆっくり歩き)=2〜3 METs 普通の歩行(速歩き含む)=3〜4 METs ジョギング=6 METs以上

また、高齢者には多要素な運動(筋力・バランス・柔軟性などの組み合わせ)や、週2~3回の筋力トレーニングも推奨されています。

高齢者における歩行の重要性

高齢者では加齢による筋力低下・バランス能力低下が避けられません。歩行は転倒予防・フレイル予防・健康寿命延伸に直結する活動です。

1日6,000歩を目標にすることで、心血管疾患・要介護リスクが低下

速歩や坂道歩行を取り入れると下肢筋力が効率的に鍛えられる

杖やシルバーカーを併用してもよい → 「安全に継続すること」が最も大切

正しいウォーキングフォーム

ウォーキングの効果を最大限にするにはフォームが重要です。

姿勢:背筋を伸ばし、目線はやや遠くを見る

腕振り:肘を軽く曲げて後方に引く

歩幅:普段よりやや広く

着地:かかとから着地し、つま先でしっかり蹴り出す

呼吸:会話できる程度に息が弾むくらいのペース

臨床では「痛みの出ない範囲で」「10分ずつ分割」から指導することが推奨されます。

施設・在宅リハでのウォーキングプログラム事例

1. 無理なく始められる「分割歩行」

「一度に60分歩けない」という方でも、10分×6回のように小分けにして歩いても同等の効果が得られます。リハビリでは「1セット5分の廊下歩行」から始めてもよいのです。

2. 高齢者の転倒予防

筋力トレーニング(スクワット・椅子立ち上がり運動)や、バランス訓練(片脚立ち・太極拳など)は転倒を大きく減少させます。施設では週2〜3回の運動プログラムが有効です。

3. 生活習慣への組み込み

通勤では「1駅分歩く」

家事(掃除や買い物)を「身体活動」としてカウント

職場では「階段利用」「立位作業」などを推奨

こうした工夫が「継続」に直結します。

【施設リハでのプログラム例】

廊下歩行:1回5〜10分 × 2〜3回/日

集団ウォーキング:施設内や庭で10〜15分間、職員付き添いで実施

歩行補助具使用訓練:杖・シルバーカーを使い、安全に歩けるよう指導

【在宅リハでのプログラム例】

屋内歩行:部屋から部屋へ移動する際に「2往復追加」

自宅周囲ウォーキング:1日10分、家族と一緒に実施

階段昇降:安全が確認できれば、1日1〜2往復から開始

屋外ウォーキング:近所の公園で10〜20分、週3〜4回

いずれも「本人の体力・疾患・環境」に応じて負荷調整することが重要です。

安全・長期的に実施するために

1.歩くことは万能薬
循環器、代謝、認知、精神、運動器にわたって効果を発揮する。

2.高齢者には“安全第一”で調整
転倒リスクを考慮し、歩行補助具や休憩を取り入れる。

3.施設・在宅での工夫が継続につながる
廊下歩行や自宅周囲ウォーキングなど、生活環境に即した実践が効果的

まとめ

成人は 1日8,000歩/60分の身体活動を目安に

高齢者は 1日6,000歩/40分+筋力・バランス運動を取り入れる

ウォーキングは「全身の健康改善効果」が科学的に証明されたシンプルな運動

正しいフォームと生活環境に即したプログラムで、継続的な実践が可能


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