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秋の気温差と血圧変動

リハビリ

櫻リハの櫻本でございます。

今回は「秋の血圧変動」についてです❗️

10月に入り、朝晩は冷え込む一方で日中はまだ暖かいという「寒暖差」が大きな季節になってきました。特に高齢者では、気温差による血圧の急な変動が心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めることが医学的に明らかになっています。
血圧は単に「高い・低い」で評価されるだけでなく、変動の幅が大きいこと自体が動脈硬化や血管障害を引き起こすリスクになります。ここでは、秋の季節変化に伴う血圧変動の仕組みとその対策、そしてリハビリ職が関わる視点を詳しく解説します。

秋に血圧が変動しやすい理由

1.気温低下による血管収縮

冷たい空気に触れると交感神経が働き、末梢血管が収縮し血圧が上昇します。特に朝方の冷え込みは「朝の血圧上昇(モーニングサージ)」を引き起こしやすいとされています。

2.日内の寒暖差

朝と昼で10℃以上の差が出る日もあり、自律神経が過剰に働き血圧の上下が激しくなります。自律神経の調整力が低下している高齢者では特に影響が大きくなります。

3.衣服調整の遅れ

「まだ大丈夫」と薄着で過ごすことで体温維持が難しくなり、知らないうちに血圧が乱れる原因となります。

4.高齢者特有の血管機能低下

加齢に伴い血管は硬くなり、急激な血圧変化を吸収できなくなります。そのため若年者よりも血圧変動の影響を強く受けます。

血圧変動がもたらす健康リスク

◯脳卒中(脳出血・脳梗塞)

血圧の急激な上昇は、脳の細い血管に直接的な負荷をかけます。特に、高血圧が長期間持続していた方は、脳内の血管がもろくなっていることが多く、急激な血圧の上昇によって血管が破綻し、「脳出血」を引き起こすリスクが高まります。

また、寒冷刺激は血管収縮を引き起こすだけでなく、血液凝固能も高める傾向があります。これに脱水や血管内皮のダメージが複合すると、血栓が形成されやすくなり、「脳梗塞」のリスクも高まります。血圧が激しく変動することは、単なる高血圧よりも予後を悪化させる要因となり得るため、厳格な変動管理が必要です。

◯心筋梗塞・狭心症

前述の通り、血管収縮によって心臓はより強い力で血液を送り出す必要があり、心臓に大きな負担がかかります。この負荷が持続すると、冠動脈の血流が悪化し、「狭心症」の発作を誘発したり、すでに不安定な状態にある冠動脈のプラークを破綻させて血栓を形成し、「心筋梗塞」に至るリスクを高めます。

◯高齢者や既往歴のある方のリスク複合

血圧変動のリスクは、既存の心血管疾患や糖尿病、脂質異常症などの既往歴を持つ方において飛躍的に高まります。動脈硬化が進行している場合、血管は柔軟性を失っており、自律神経による急激な調節に対応できません。さらに、不整脈(特に心房細動など)の既往がある場合、血圧の変動と血液の凝固しやすい状態が複合することで、致死的な血栓イベントが発生する可能性が極めて高くなります。気温差が大きくなる秋には、これらのハイリスク群の方々に対して、より厳重な生活管理と、専門医(循環器内科)による定期的なリスク評価を強く推奨します。

◯腎機能障害の進行

腎臓は血圧変動に敏感で、変動が大きいと慢性腎臓病(CKD)の進行が早まるとされています。

特に「変動性高血圧(血圧が大きく上下する状態)」は持続的な高血圧以上にリスク因子として注目されています。

血圧管理の基礎:正確な「家庭血圧測定」の徹底(JSH準拠)

秋の気温差による血圧変動を把握し、適切な管理を行うための最初のステップは、正確な家庭血圧測定を習慣化することです。病院での測定だけでは、日常生活における、特に気温差に起因する変動(モーニングサージなど)を捉えることができません。日本高血圧学会(JSH)は、診断と治療効果の評価において家庭血圧を重視しています 。  

◯正しい測定手順:時間、回数、環境の統一

血圧は、時間帯、体調、行動、精神状態など、わずかな要因で変動します 。秋の気温差による変動は特に大きいため、測定のわずかなズレが致命的な管理ミスにつながる可能性があります。正確な測定こそが、安全管理の出発点です。

1.測定のタイミングと回数

原則として、起床後1時間以内(服薬前、排尿後)と就寝前の1日2回測定が必須です。また、1機会につき原則2回測定し、その平均値を採用することが推奨されています 。継続的な傾向を把握するため、最低でも週5日以上、毎日記録することが重要です 。  

2.測定前の準備

測定前には、必ず排尿、排便を済ませ、数分間安静にしてから、尿意・便意のない状態で測定することが推奨されます 。また、測定中は会話を控え、リラックスした状態を保ちます。

◯カフの正しい巻き方と姿勢の原則

家庭血圧測定の正確性を高めるために、カフ(腕帯)の巻き方と姿勢のルールを厳守する必要があります。

1.姿勢とカフの位置、服装の注意

血圧は心臓の高さで測定することが原則です 。測定器が心臓よりも高すぎたり低すぎたりすると、不正確な値が出ます。また、測定部位は上腕が推奨されます。

カフは、素肌または薄手の肌着の上から巻いてください 。厚い生地の上から測定したり、腕まくりをした状態で測定すると、生地が血管を圧迫し、血圧計の圧力が血管に正しく伝わらなくなることがあります。

◯測定値の記録と目標値

測定した数値は、測定時間、特記事項(気温、体調、服薬状況など)とともに記録し、変動傾向を把握することが重要です。一般的に、家庭血圧の管理目標値は、診察室血圧よりも低い基準値が用いられます。

正確な測定条件を統一することは、自律神経の変動が大きい季節において、血圧の「真の値」を捉えるために不可欠であり、医療従事者が治療方針を決定する上で最も重要な情報源となります。

家庭血圧測定の推奨基準 (JSH準拠)

項目推奨される条件根拠・留意点
測定タイミング起床後1時間以内、就寝前の1日2回日内変動の把握、特に寒暖差による朝の変動を検出
測定回数1機会につき原則2回測定し、平均値を採用測定誤差や一時的な変動を排除し、安定した値を得るため
頻度週5日以上(毎日が理想)継続的な傾向把握と季節変動の評価
準備/姿勢排泄を済ませ、数分間安静後。心臓の高さで測定尿意・便意や姿勢の違いによる誤差の排除
カフの巻き方素肌または薄手の肌着の上から厚着や腕まくりは圧迫を生じ、不正確な値を招く 3

リハビリテーション専門職が推奨する運動療法と支援

運動療法は、薬物療法と並ぶ高血圧治療の柱であり、特に秋の気温変動に対する体の耐性を高める上で決定的な役割を果たします。運動は、自律神経のバランスを整え、血管を広がりやすくすることで、血圧を下げる効果があります。

◯運動療法による血圧安定化

定期的な有酸素運動は、交感神経の過剰な働きを抑え、副交感神経の働きを優位にすることで、自律神経のバランスを整えます。これにより、急な寒冷刺激による血管の過剰な収縮反応を緩和し、血圧の急激な変動を抑える効果が期待できます 。厚生労働省のデータによると、定期的な有酸素運動を行うことで、高血圧患者の収縮期血圧は3~5mmHg、拡張期血圧は2~3mmHgの低下が期待されます

1.有酸素運動

持続的に行う全身運動(ウォーキング、軽いジョギング、サイクリング、水泳など)を推奨します 。運動強度は、会話ができる程度の強度(楽な強さ)を目安にすると良いでしょう 。運動時間は、10分以上の運動を合計して30分以上、頻度は週3~5回を目標とします 。

2.筋力トレーニング

有酸素運動に加えて、筋力トレーニング(レジスタンス運動)も適切に行えば高血圧患者に有益です 。軽負荷から始め、特に下肢の筋肉を鍛えることは血流改善に直結します。10~15回を1~2セット、週2~3回を目安に行います 。決して高負荷で息をこらえるようなトレーニングは行わないように注意が必要です。

3.生活環境のアドバイス

秋から冬にかけて増加する「ヒートショック」は、急激な温度変化が血圧を乱高下させる危険な現象です。特に高齢者は、この血圧の乱れから意識を失ったり、脳血管イベントを発症するリスクが高まります。

ヒートショックを予防するためには、居室だけでなく、脱衣所や浴室、トイレなど、温度差が生じやすい場所を事前に暖めておくことが重要です。室内温度の差を可能な限り小さく保つことで、急な交感神経の活性化を防ぎます。

◯介護現場や家庭での具体的注意点

血圧が急に高くなっても慌てず、まずは安静にして再測定。

頭痛・胸痛・めまいなどの症状があれば速やかに医療機関へ。

利用者や家族には「寒さを我慢しない」「朝の起床時はゆっくり動き出す」ことを日常的に声掛けする。

まとめ:継続的な自己管理の重要性

秋の気温差は、高血圧患者にとって避けて通れない大きなリスク要因です。この季節の血圧変動を乗り切り、重篤な疾患を予防するためには、以下の三つの柱を徹底し、継続的な自己管理を習慣化することが不可欠です。

1.測定の徹底: 毎日、決まった時間・決まった条件で、正確に家庭血圧を測定・記録し、変動の傾向を把握すること。

2.運動と環境: 有酸素運動を中心に自律神経の耐性を高めること。また、服装や暖房を工夫し、朝晩の寒冷刺激や急激な温度差を避けること。

これらの生活習慣の調整にもかかわらず、血圧が不安定な状態が続く場合や、異常な変動(高すぎる、または低すぎる)や体調不良を感じた場合は、速やかに専門医(循環器内科)にご相談ください。


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