櫻訪問リハビリテーション
桜の写真

ブログ

嚥下評価 -頚部聴診法-

リハビリ

櫻リハの櫻本でございます🙇‍♂️

今回は前回に引き続いて誤嚥性肺炎についてですが「嚥下評価」にも触れていこうと思います❗️

誤嚥性肺炎は高齢者の主要な健康リスクの一つであり、臨床での早期発見と適切な食事管理が重症化を防ぎます。嚥下機能の低下は多原因で、観察・聴診・必要時の器械的検査(VF/VE)を組み合わせた評価が重要です。臨床現場で簡便に行える頚部聴診法(cervical auscultation)の具体的手順と所見の読み方をわかりやすくまとめます。

誤嚥性肺炎と嚥下機能低下

誤嚥(食物・分泌物が気道へ入ること)は、誤嚥性肺炎の主要なリスク因子の一つです。高齢者では咳反射低下・唾液誤嚥・口腔内細菌増加などが複合して肺炎リスクを上げます。予防には口腔ケア・嚥下評価・適切な食形態設定が必要です。

併せて読みたい

嚥下評価の全体像

病歴聴取:誤嚥既往、体重減少、咳嗽、嚥下困難感、食事時間延長、嚥下時の声音変化。

臨床観察:唾液量、姿勢、咀嚼能力、咳嗽・咳反応、声質変化(濁音)をチェック。

頚部聴診法:嚥下音と呼吸音を確認(下記で詳述)

スクリーニング検査:改良水飲み試験など。異常があればVF(嚥下造影)/VE(嚥下内視鏡)で定量的評価。VF/VEは食形態決定の“ゴールドスタンダード”だが、実施できない現実もあり、観察法の標準化が望まれる。

頚部聴診法とは:目的・利点

目的:咽頭部で生じる嚥下音や嚥下前後の呼吸音を聴取し、主に咽頭期における嚥下障害を判定する方法

利点:自由を食品を選択でき、ベッドサイドや食事場面で手早く、非侵襲、どこでも実施可能。多人数スクリーニングや臨時の再評価に向く

限界:聴診所見の解釈には経験が必要。頚部聴診でリスク判定ができなければVF/VEへ繋ぐ

頚部聴診法

◯準備

標準的な聴診器(小児用/成人用どちらでも可)を使用。接触子は膜型を推奨。

◯ポジショニングと聴取部位

咽頭の側面付近に当てて聴取。あくまでも咽頭(甲状軟骨・輪状軟骨)の横に当てる事で十分な嚥下音、呼吸音を聴取することができる。

◯手順

評価前にゴロゴロとした咽頭の分泌物貯留音が聴取するなら咳や喀出、嚥下によってなるべくクリアな状態にしてから聴取を開始する。

嚥下音の聴取で咽頭クリアランス、嚥下反射のタイミングといった咽頭期の嚥下状態をとらえます

1.まず安静時の呼吸音を聴いて基準を取る。

2.提供する液体または食物(通常は水5–10 mLや唾液の嚥下)を患者に「飲んでください」と指示。

通常は一回で飲み切ることができるので明瞭な短時間の嚥下音が1回聴取される

3.嚥下時と嚥下直後を注意深く聴取。必要に応じて複数回(異なる粘度)で反復する。

嚥下音は、液体と半固形では液体の方が大きく高い音が聴取できる

→一回量が多いと、複数回嚥下になることがある(口腔内保持しながら分割嚥下ができているか)

4.聴診所見をメモ(音の有無、異音の種類、嚥下/呼吸の崩れ、咳嗽の有無)

正常音は明瞭な嚥下音、嚥下直後にハーと澄んだ呼気音が聴取できる

頚部聴診法の注目すべき項目

◯嚥下音の大きさ

食道入口を通過した時と、少量しか通過しなかった時の嚥下音の大きさは差が出やすい

◯嚥下音のキレ

嚥下時にゴクやコクンとキレのある明瞭な音は喉頭蓋反転がしっかり行われ、綺麗に食道入口部を通過した時の特徴。喉頭蓋反転不良時には、ギュッとキレの悪い音が出現し症状音に比べて低めの音が出やすい。

◯嚥下回数が多い

食塊形成〜送り込みが拙劣だったり、咽頭クリアランスが不十分な場合は2回目、3回目など追加嚥下が見られることがある。梨状窩に残留した場合、特に流動性が高いものだと誤嚥に直結しやすいのでゴキュ、ゴキュッ、ゴキュッと慌てた感じの嚥下が連続して起きやすくなる

慌てた感じで嚥下回数が多い場合は、咽頭残留が目立ち誤嚥リスクが高い状態だと思われる。

◯空気を含んだような嚥下音

嚥下障害者では、液体摂取時に嚥下反射が遅れやすく、液体が嚥下反射前に梨状窩付近まで流入することがよくある。喉頭蓋斑点が遅れたり、咽頭収縮が遅れて咽頭上部の閉鎖が不十分な場合、通常より空間が生じやすくなり嚥下時に空気を含んだような音が出やすくなる。空気を含んだ泡立ったような異常音が聴取される。

嚥下後聴診

嚥下音の聴取で咽頭クリアランスや嚥下反射のタイミングの評価後に次に起こる、嚥下音や呼吸音などの聴診を行う。

◯むせ(喀出音)

咽頭期の感覚や咳嗽反射が正常であれば、誤嚥・喉頭侵入直後に明らかなむせがみられる。しかし、嚥下障害者ではその感覚は反射が低下し、誤嚥・喉頭侵入時にむせがみられない、むせが遅れて起こる場合があり不顕性誤嚥と呼ばれる。しかし、不顕性誤嚥といっても全く反応がないわけではない。数十秒遅れて弱い喀出音が聴かれたり、呼吸音に変化が見られたりすることが多い

◯湿性呼気音

正常嚥下直後には、澄んだ呼気音が聴取される。嚥下直後にクリアだった場合、声帯付近には貯留物、分泌物はないと判断できる。注意したいのは、声帯付近にない事で、咽頭残留を否定するものではないということ。前述した付近に誤嚥物や分泌物がある場合は、呼吸時にブルブルと震えるような湿性音が聴取される。

◯湿性嗄声

声帯付近に貯留物や分泌物がある場合、嚥下後の発声時にガラガラという音が混じる湿性嗄声と呼ばれる音が聴かれる。湿性呼気音・湿性嗄声とも嚥下前になかった湿性音が、嚥下後に聴取されることで異常を疑います

◯その他

嚥下後の咽頭残留や誤嚥・喉頭侵入がみられると、嚥下後の呼吸停止時間の延長や呼吸パターンの乱れが聴取される場合がある。

豆知識 -喉頭下垂-

咽頭クリアランスの評価は、年齢・男性・女性か性別チェックし喉頭下垂の有無を確認する。

◯性差

女性であれば、咽頭クリアランス不良の可能性は少なく、高齢男性の方が比較多い傾向にあります。

平均寿命が女性より男性の方が多い・餅による窒息死亡事故が男性方が女性より2.6倍多いなどデータ上では咽頭クリアランス不良の影響は少なくないと考えます。

◯喉頭下垂の有無

高齢者の喉頭位置は70歳ごろから下垂しはじめ、成人期に比べ1椎体分ほど下降すると言われている。喉頭下垂は、加齢や筋力低下などによって生じると考えられているが、男女差が大きく、ほとんどの男性で見られる特徴です。喉頭下垂や咽頭腔拡大は咽頭クリアランスを予測する重要なポイントとなる。

まとめ

頚部聴診法は、VF/VEのような精密検査に代わるものではありませんが、不顕性誤嚥という「見えないリスク」を日常のベッドサイドで迅速かつ非侵襲的に捉えるための強力なツールです。実施頻度と精度を高めることは、嚥下機能の動的な変化を捉え、誤嚥性肺炎に至る前の早期介入の機会を飛躍的に増加させます。

誤嚥性肺炎を予防し、安全かつ豊かな経口摂取を維持するためには、医師、リハビリ職、管理栄養士、看護師、介護士を含む多職種チームが、評価結果と科学的基準を共有し、密接に連携することが求められます。


お問い合わせ・ご相談はこちらから

櫻訪問リハビリテーションでは、高齢者施設にご入居の皆さまや施設職員の方々へ、個別リハビリテーションの提供を通じて、施設サービスの質の向上をお手伝いしています。

嚥下機能の低下された方への頸部聴診による嚥下評価や姿勢指導など丁寧に対応させて頂きます。

マッサージやストレッチのみのご利用も可能ですので、お気軽にご相談ください。

詳しいご説明やご相談は、どうぞお気軽にお問い合わせください🙇‍♂️