湿度が高いとむくみやすい?浮腫と湿度の意外な関係と対策
リハビリ2025-05-28

櫻リハの櫻本でございます。
今回は「湿度とむくみの関係」です❗️
日本の梅雨から夏にかけての時期は、高湿度と気圧の変化で、体調不良や「むくみ(浮腫)」の訴えが増える季節です。特に「足のだるさ」「靴がきつく感じる」といった下肢の浮腫は、多くの人にとって悩ましい症状です。
浮腫の原因と湿度の関係、浮腫の原因や注意すべき疾患との見極め方、弾性ストッキングの使い方、世代ごとの特徴、自宅でできる対処法についてお話していこうと思います。
浮腫(むくみ)とは?

浮腫とは、皮下組織に水分(間質液)が過剰に貯留した状態を指します。通常、体内の水分は血管と細胞の間をバランスよく移動していますが、その調整が乱れることで「むくみ」が生じます。
✅一時的な浮腫の原因
長時間の立ち仕事・デスクワーク
塩分の多い食事
運動不足
睡眠不足・冷え・自律神経の乱れ
⚠️ 病的な浮腫が疑われるケース
心不全・腎機能障害・肝疾患などの内臓疾患
一日中むくみが引かない
片側だけむくむ(特に下肢)
息切れや体重急増を伴う
→栄養状態の悪化や肝・腎疾患による血漿タンパク質(特にアルブミン)の低下
体液をうまく排出できなくなる心不全のむくみには医療機関の受診が必要です。
高齢者と働き盛りの人で異なるむくみの特徴
年齢層 | 特徴 | 原因例 |
高齢者の世代 | 動きが少ない・筋力低下 | リンパ・静脈のうっ滞、心不全 |
働き盛りの世代 | 座位・立位が長い、運動不足 | 筋ポンプ作用の不足、血流の停滞 |
高齢者は重篤な疾患が隠れていることもあるため、早期の医療介入が大切です。
一方、働き盛りの方は生活習慣を整えることで改善が見込めます。
湿度の高い季節(梅雨〜夏)にむくみやすくなる理由

これからの時期は気温が高まり、湿度も上がるため、汗をかきやすくなります。一方で湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、汗で排出する水分が減り体温調節機能がうまく働かないため、「体に水がたまりやすく」なり、浮腫につながります。
また、湿気による自律神経の乱れが、血管の拡張・収縮のコントロールを狂わせ、末梢の血流停滞=むくみに繋がります。
【気温・湿度が高いときに浮腫みやすくなる流れ】
【高温・高湿度】
↓
発汗しづらくなる(汗が蒸発せず体温が下がらない)
↓
体は体温を下げようと末梢血管を拡張する
↓
➤ 毛細血管内の圧力が上昇
➤ 血漿の水分が間質(細胞と細胞のすき間)にしみ出す(=濾出)
↓
静脈やリンパの流れが滞りやすくなる(汗や尿での排出が減少)
↓
漏れた水分を回収しきれず、皮下にたまる
↓
✅ むくみ(浮腫)の発生
💡ポイント別に解説
要因 | 内容 | 結果 |
高温 | 熱を逃がすために血管が拡張 | 血管内圧が上昇し、血漿成分が漏れやすくなる |
高湿度 | 汗が蒸発せず体温が下がらない | 体温調節が難しくなり、さらに血管拡張が進む |
発汗減少 | 水分の排出が低下 | 体内に水分がたまりやすくなる |
静脈・リンパのうっ滞 | 特に下肢で戻りにくくなる | たまった水分が回収されず皮下に蓄積=むくみ |
水分制限は逆効果?浮腫時こそ“適切な”水分摂取を

「浮腫んでいるから水分を控えよう」と考える方がいますが、それは誤解です。
水分を極端に減らすと、かえって体内が「水分不足」と認識して水分を溜め込もうとし、逆にむくみが悪化することがあります。
むくみ対策としての水分摂取のポイント
朝・昼・夕に分けてこまめに水分を補給
冷たい飲み物より常温〜ぬるま湯がおすすめ
水分摂取の目安:1.0〜1.5L/日(疾患がなければ)
※心不全・腎不全などで制限がある場合は医師の指示に従ってください
合わせて読みたい
弾性ストッキング(着圧ソックス)の効果と使い方

弾性ストッキング(compression stockings)は、足首からふくらはぎ・太ももにかけて段階的に圧力をかけることで、静脈やリンパの流れを補助する医療機器または市販品です。
医療現場では「医療用弾性ストッキング」として下肢静脈瘤やリンパ浮腫の治療に用いられ、市販品もむくみ対策や疲労軽減目的で広く普及しています。
圧力による分類(mmHg)
圧迫圧 | 主な用途 | 市販の可能性 |
軽圧(10〜20mmHg) | 疲労予防・立ち仕事・軽度のむくみ | 一般的なドラッグストアで販売 |
中圧(20〜30mmHg) | 軽度の下肢静脈瘤、立ち仕事での浮腫 | 医療用または一部市販品 |
高圧(30mmHg以上) | 重度のリンパ浮腫や術後管理 | 医療機関での処方が必要 |
🔸市販品は主に軽圧〜中圧程度のものが多く、「段階着圧設計」と書かれているものが効果的です。
弾性ストッキングの効果
静脈血のうっ滞を軽減し、心臓への血液還流を促進
リンパ液の流れも助ける
夕方の脚のだるさ・重さを軽減
筋ポンプ作用の代用
着用の注意点
朝起きてすぐに着用(むくみが出る前)
就寝時は外す
圧迫感が強い場合や皮膚の異常がある場合は使用を中止
自宅でできるセルフケア:マッサージと運動療法
下肢リンパドレナージの基本手順

クリームを使って摩擦を減らし、足首からふくらはぎに向かってやさしくなでる(心臓方向へ)
膝裏のリンパ節を軽く押しながら円を描く
ふともも→足の付け根(鼠径部)へと流すように圧をかける
※力は「皮膚が軽く動く程度」、1回3〜5分で十分です。
簡単な運動(ふくらはぎの筋ポンプ刺激)

座位:椅子に座り、かかとを上げ下げします
立位:壁や机に軽く手をつき、かかとを上げ下げします
20回×3セット
足首の回旋

内回し・外回しを各15回
まとめ:湿度の高い時期は「流れ」を意識したケアが鍵
湿度と気圧の変化が大きい夏の時期は、むくみを悪化させる要因が重なります。
だからこそ、こまめな水分摂取、セルフマッサージ、運動、弾性ストッキングの併用でリンパや静脈の流れを意識することが、体調管理の要になります。
「浮腫はただの水太り」ではありません。体のサインを見逃さず、正しい知識で乗り切りましょう。
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櫻訪問リハビリテーションでは、高齢者施設にご入居の皆さまや施設職員の方々へ、個別リハビリテーションの提供を通じて、施設サービスの質の向上をお手伝いしています。
運動不足による「ふくらはぎの筋ポンプ作用の低下」や、「動くことへの不安・億劫さ」を抱える方に対しても、状態に応じた無理のないリハビリプランをご提案いたします。
マッサージやストレッチのみのご利用も可能ですので、お気軽にご相談ください。
詳しいご説明やご相談は、どうぞお気軽にお問い合わせください🙇♂️
【引用・参考文献】
1)厚生労働省「がんのリハビリテーション、およびリンパ浮腫診療の一層の推進に関する研究」
2)日本静脈学会「静脈疾患における圧迫療法ガイドライン 2024」
3)厚生労働省eJIM. 「あん摩・マッサージ・指圧 エビデンスレポート 2021」
4)日本腎臓学会. 「CKD診療ガイドライン 2023」
5)標準理学療法学シリーズ『内部障害理学療法学』(医学書院)
6)高橋秀寿ら. 「むくみにおける水分制限の是非」『日内会誌』第111巻 第5号(2022)