命を守る夏の熱中症対策!高齢者や屋外スポーツに効果的な「アイススラリー」と「前腕手掌冷却」の科学
リハビリ2025-07-02

櫻リハの櫻本でございます🙇♂️
今回は「アイススラリーと前腕手掌冷却」についてです❗️
あまり聞きなれない言葉かもしれませんね、昨今の夏は命の危険を感じるほど熱中症の危険を大いに感じていると思います。
過酷な日本の夏、命を守る「冷却戦略」が必要です❗️
近年の日本の夏は、気温35℃を超える猛暑日が当たり前となり、高齢者やスポーツをする人々にとっては命に関わる暑さとなっています。
熱中症は予防が何よりも重要であり、その対策として今注目されているのが「アイススラリー」と「前腕手掌冷却」です。
これらの冷却法の効果と正しい活用法を科学的根拠とともにわかりやすく解説します。
熱中症とは?:命に関わる「体温調節の破綻」
熱中症は、体温調節ができずに体温が異常に上昇する状態を指します。重症化すると、意識障害や多臓器不全に至ることもあります。

特に高齢者は、以下の理由で熱中症リスクが高くなります
体温調節機能の低下(発汗反応の鈍化)
喉の渇きを感じにくく、脱水に気づきにくい
薬剤(利尿薬など)の影響
40%以上の高齢者が「水分は足りている」と誤認しているという実態が明らかになっています。
併せて読みたい!
アイススラリーとは?:内臓から効率的に冷やす新習慣
◯アイススラリーの定義
アイススラリーとは、シャーベット状に凍結された飲料を摂取することで、体内から深部体温を効果的に下げる方法です。液体よりもアイススラリーは流動性があり、喉から食道、胃、腸へと貼りつきながら流れていきます。その結果、粘膜への接着面が多く、粘膜から体液に吸収されて、効果的に冷却できるのです。

◯アイススラリーの科学的効果
深部体温を0.3〜0.5℃低下させる
運動パフォーマンスの向上
運動後のリカバリーに有効
作業時の疲労感軽減と安全性向上

※暑熱環境下におけるアイススラリー飲用が深部体温を低下 引用画像
運動パフォーマンスの向上や運動後のリカバリーに有効でありましたが、安静時のアイススラリーの飲用が、深部体温を低下させることが上記の画像でわかります。
スポーツ飲料と氷が混ざったアイススラリーは電解質も入っているので、脚がつるような症状の発生頻度を下げることができ、脱水が抑制され脳への血液循環の維持にも効果が期待できます。
市販されているアイススラリー
前腕手掌冷却とは?:動静脈吻合を活かした深部体温冷却法
◯前腕と手掌は「熱交換器」
人間の手掌には動静脈吻合(AVA)という特殊な血管構造が存在し、体熱の放散が非常に効率的です。前腕も皮膚血流が多く、冷却に適しています。

◯前腕と手掌を同時に冷却することで最大効果
前腕と手掌を同時に冷却することで、
AVAによる深部体温の迅速な低下
前腕の静脈血流の冷却による体幹温の安定化
といった相乗効果が得られます。研究では、手掌だけの冷却よりも、前腕と手掌を一体的に冷却した方が深部体温の低下速度が速く、持続時間も長いとされています。
◯科学的エビデンス
Grahnら(2012)は、AVA部位である手掌の冷却により、深部体温を急速に下げる効果を示しました。
Nakaiら(2016)は、手掌と前腕を10〜15℃の水に同時に10分間浸すことで、高齢者の入浴後の体温上昇を抑制したと報告しています。
◯実施方法
手首より5㎝上まで入るバケツなどに10〜15℃の水を入れる
前腕から手掌全体をまとめて10分間程度浸漬
氷水ではなく、やや冷たい水の方が皮膚血流が保たれ効果的
活動前のプレクーリングで熱中症予防!

◯プレ・クーリング(Pre-cooling)とは?
プレクーリング(=pre-cooling)とは、運動や活動を始める30分〜60分前に身体の深部体温をあらかじめ下げておくことで、熱の蓄積を遅らせ、パフォーマンスを長時間維持する目的の冷却戦略です。
◯科学的な根拠と仕組み
運動中、身体は筋肉活動と外気温の影響により深部体温が上昇します。これが一定以上になると、パフォーマンスは著しく低下し、最悪の場合は熱中症に至ることもあります。
プレクーリングによって体温を低下させておくと
体温の安全域(熱貯蔵容量)が拡大する
体温が「限界点」に達するまでの時間が長くなる
発汗反応や皮膚血流の調節がスムーズになる
◯プレクーリングの主な方法
方法 | 内容 | 特徴・メリット |
---|---|---|
アイススラリー摂取 | 凍らせた経口補水液やスポーツ飲料(−1〜0℃)を摂取 | 深部体温を下げる。簡便で即効性がある。 |
アイスベスト着用 | 胴体に装着する冷却ベスト | 表面温度を下げ、汗の蒸発を抑制。暑熱順化前でも有効。 |
冷水浴(15〜20℃水に10〜20分浸漬) | 浴槽や水槽で身体を冷やす | 施設・設備が必要。 |
手掌・前腕冷却 | 手のひらや前腕を冷水で冷却(10分程度) | 実施が簡単。AVA(動静脈吻合)部位の冷却により体温降下が早い。 |
アイススラリーの摂取が日常的に使用しやすく、簡便です
◯高齢者と日常活用のポイント
高齢者では、体温調節機能が低下しているため、プレクーリングは熱中症予防に極めて有効です。
【外出・屋外作業の30分前にアイススラリー摂取】
高齢者は「喉の渇きや暑さを感じにくい」ため、自覚がなくても事前の冷却ルーチンを組むことが重要です。
活動が長時間または高強度の場合、途中で「再度アイススラリー」を摂取しましょう❗️
⚠️注意点
心疾患・糖尿病・腎機能低下の方は冷却による血圧変動に注意
冷水や氷の直接接触は凍傷リスクあり →布などを介在させる
冷やしすぎによる低体温や震えにも注意
まとめ:アイススラリーと手掌冷却は「手軽で安全」な熱中症予防法
日本の酷暑を乗り切るためには、体表面からの冷却だけでなく、内側からの深部冷却や血流の効率的な冷却が鍵になります。
「アイススラリー」と「前腕手掌冷却」は、科学的に効果が証明された熱中症対策であり、高齢者にも手軽に実施可能です。
高齢者の“冷えにくさ”は水分摂取だけでは解決しないとされており、深部体温管理の重要性が強調されています。日常生活や介護現場、スポーツ現場での新しい「冷却習慣」として、ぜひ取り入れてみてください。
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【引用・参考文献】
3)Kenefick RW, Sawka MN. (2007). Hydration at the work site. J Am Coll Nutr. 26(sup5):597S–603S.
4)大正製薬株式会社 なぜ高齢者の熱中症は減らないのか?
5)大正製薬株式会社 暑熱環境下におけるアイススラリー飲用が深部体温を低下