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フォワードランジはアンクルロッカー機構の機能改善に有効か?

リハビリ

櫻リハの櫻本でございます。

今回は歩いている時の不安定性の一因の足首に着目していこうと思います。

歩行は日常生活における基本的かつ重要な動作ですが、その背後には複雑な関節運動と姿勢やバランスなどが関与しています。足首の機能【アンクルロッカー機構】アンクルロッカー機構は、足関節での適切な運動パターン(踵接地から前足部への体重移行に伴う踵の持ち上がり動作)を担い、スムーズな歩行や階段昇降の実現に不可欠な役割を果たしています。今回は、【フォワードランジ】と【アンクルロッカー機構】の関係と機能改善にどのように関係するのかを詳しく見ていきます。

アンクルロッカー機構とは?

アンクルロッカー機構とは、歩行時において足関節が小さな円弧状に動く作用のことです。

具体的には、以下の点が重要です

動的安定性の確保 足関節の適切な角度(特に足首の背屈)が維持されることで、前方への体重移動時に安定した支持基盤が形成され、転倒リスクを低減します。

エネルギー効率の向上 適切な踵離地により、力の伝達が効率的になり、歩行時に無駄なエネルギー消費を抑える効果があります。

歩行パターンの最適化 アンクルロッカーが正常に機能することで、膝や股関節への過度なストレスを回避し、全体として調和のとれた歩行が可能になります。

◯歩行の不安定化 → 転倒リスク上昇

◯脛骨の前傾不足 → 推進力低下

◯足関節背屈制限 → 歩幅減少、膝の代償運動増加(過伸展や反張膝)

これらの点は、特に高齢者や慢性的な足関節不安定症の患者にとって、リハビリテーションの重要なターゲットとなっています。

フォワードランジとは?

フォワードランジは、前方に一歩踏み出し、後ろ足を支点に両膝を降ろしていく動作です。

以下の特長があります。

筋力強化 大腿四頭筋、ハムストリングス、臀筋群のみならず、下腿三頭筋や前脛骨筋といった足関節周囲の筋群も効果的に刺激されます。体幹筋では、脊柱起立筋や多裂筋、腹横筋なども働きます。

可動域の拡大 特に足首周りの柔軟性と可動域の増加が期待でき、歩行時の踵離地や背屈動作の改善につながります。

神経筋協調の向上 複雑なバランス調整が要求されるため、歩行中の足関節の微妙な調整能力が養われ、下腿三頭筋(腓腹筋・ヒラメ筋)と脛骨の協調運動を鍛える事ができます。

これらの効果が、アンクルロッカー機構の円滑な動作を支える基盤となるのです。

フォワードランジがアンクルロッカー機構を改善する3つのメカニズム

ここからは、フォワードランジがアンクルロッカーの改善に効果的な理由を、機能別に掘り下げます。

【足関節背屈可動域の拡大】

ランジ姿勢で前方に重心を移動させると、前脚の足関節は自然と背屈されます。この動作がアンクルロッカー機構と同様の運動パターンであるため、反復することで足関節の柔軟性と関節可動域の改善が期待できます。

→ 固有感覚入力の増加により、背屈角度制限を伴う脛骨の前傾不足を是正できる可能性があります

足関節周囲筋の筋力と協調性の改善】

ランジ中には前脛骨筋(背屈)と下腿三頭筋(底屈)が拮抗しながら安定性を保ちます。この神経筋制御が脛骨の前傾を支持する力学的安定性の向上につながり、歩行中のアンクルロッカーが必要とする微調整能力を高めます。

特に前方重心を支えるための伸張性収縮が鍛えられ、歩行時のバランス保持能力が向上します。

【骨盤・体幹のコントロール改善による重心移動の正常化】

アンクルロッカー機構は足関節単体の問題ではなく、下肢全体および体幹との連動性の問題とも言えます。フォワードランジでは、骨盤の安定や体幹の前後動揺制御が求められるため、重心を効率的に前方へ移す能力を訓練できます。

このような運動連鎖を通じて、脛骨の前傾がより自然に発生しやすい環境が作られるのです。

フォワードランジのやり方

※左上の図から開始姿勢

①肩幅に立ち、腰に手を置きながら片足を一歩前へ出す。

②両脚が90度の角度になるまで曲げる。この時前にだいた脚の膝がつま先より前に出ないように注意

③後足を床に押し付けながら、前脚を後ろへ戻し、最初の姿勢に戻る

大腿四頭筋は意識しやすいが、ハムストリングスと大臀筋の使い方を意識していきたい。

臨床現場の応用

高齢者や足関節・膝関節・股関節に可動域制限のある利用者や患者においては、段階的に導入していく事が重要になる。

段階内容目的
ステップ1壁または手すりにつかまり
片脚前出し
足関節背屈の柔軟性獲得
ステップ2ミニランジ関節保護しながら安定性やコントロールを重視
ステップ3ハーフランジ関節負荷を考慮しながら筋力の増強や筋持久力の向上

痛みや関節負荷を考慮し段階的にリハビリ実施しましょう。時には必要に応じて、バランスマットを使用した変法も有効です。

まとめ

アンクルロッカー機構の改善には、足関節の柔軟性と神経筋協調性、さらには重心移動の習得が必要不可欠です。フォワードランジはそれらの要素を統合的に刺激する運動であり、歩行の質を高めるための有効なリハビリ手段の一つといえるでしょう。

歩行に問題を抱える患者に対して、「足関節の可動域訓練」や「単関節筋トレ」だけでは不十分な場合、全身協調を含めた機能的エクササイズとしてフォワードランジの導入を検討してみてはいかがでしょうか。


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【引用・参考文献】

1)Neumann, D. A. (2010). Kinesiology of the Musculoskeletal System: Foundations for Rehabilitation (2nd ed.).

2)Van Dillen, L. R., et al. (2007). Effect of foot and ankle position on hip and knee kinematics during forward lunges. JOSPT.

3)Hoang, P. D., et al. (2017). Effect of gastrocnemius and soleus stretching on ankle dorsiflexion ROM. Clinical Biomechanics.

4)Tiberio, D. (1987). Pathomechanics of structural foot deformities. Physical Therapy.