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高齢者虐待とは?種類・施設での防止策・法律まで

リハビリ

櫻リハの櫻本でございます。

今回は介護業界で働く方々には切っても切れない大変重要な内容です。

「高齢者虐待」についてです❗️

近年、高齢者虐待は大きな社会問題となっています。
日本では高齢化が急速に進み、今後は65歳以上が人口の3割を占めるといわれています。
その一方で、介護を必要とする高齢者と、それを支える家族や施設職員の負担が重くなり、虐待という深刻な問題が起こっています。

高齢者虐待は、被害者本人の命や尊厳を脅かすだけでなく、家族や介護職員自身も深く傷つける問題です。
高齢者虐待の種類介護施設や家庭でできる防止策、そして法律(高齢者虐待防止法)について、さわり程度ですがお話ししていこうと思います。

高齢者虐待とは

高齢者虐待の定義

世界保健機関(WHO)は高齢者虐待を次のように定義しています。

「信頼関係に基づく関係の中で、高齢者に対して単発または反復して加えられる、身体的・心理的・性的・経済的な害または不作為」

日本では2006年に施行された高齢者虐待防止法においても、家族や介護施設職員による虐待を対象に、虐待行為を防ぐことを目的としています。

なぜ虐待が起こるのか?背景

・介護者の心身疲労(介護うつ)

・認知症高齢者とのコミュニケーションの難しさ

・人手不足による介護現場の疲弊

・社会的孤立・経済的困窮

虐待は、「悪い人だけ」がするものではありません。
追い詰められた家族や、サポートを受けられない介護職員が、知らないうちに虐待に至ってしまうことが多いのです。

高齢者虐待の種類と具体例

高齢者虐待には5つの種類があります。それぞれ事例を交えて見ていきましょう。

身体的虐待

◯高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴力を加えること。

・叩く、蹴る、つねる

・ベッドや椅子に縛りつける

・無理に動かしたり、乱暴な介護

【例】

認知症の症状で言うことの聞かない高齢者に対して、怒りに任せて殴ってしまう。

介護・世話の放棄(ネグレクト)

◯高齢者を衰弱させるような著しい減食、長時間の放置、養護者以外の同居人による虐待行為の放置など、養護を著しく怠ること。

・食事や水分を与えない

・必要な医療を受けさせない

・衣服や排泄のケアを怠る

【例】
介護者が疲弊し、トイレに連れて行くことを怠ったため、尿路感染症になった。

心理的虐待

◯高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

・怒鳴る、暴言を吐く

・無視をする

・脅す、バカにする

【例】
「こんなこともできないのか!」と日常的に怒鳴る。

性的虐待

◯高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること。

・わいせつな言葉や行動

・不必要な身体接触

・性的行為の強要

【例】
排泄介助の際に、必要以上に身体に触れる。

経済的虐待

◯養護者又は高齢者の親族が当該高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること。

・年金や預金を無断で使用

・金品を無理に贈らせる

・財産を不当に処分する

【例】
「施設の費用に使う」と言って、実際は自分の買い物に年金を使っていた。

介護施設・在宅における特徴

施設虐待の特徴

・教育不足の新任職員による不適切ケア

・夜勤帯の人員不足による対応の乱暴化

・管理者が虐待のサインに気づかない

家庭内虐待の特徴

・介護する家族の孤立

・経済的負担や精神的ストレスの蓄積

・介護疲れから手を出してしまう

様々な理由があり、上記の内容だけではありませんが一例として下さい。

高齢者虐待防止法の内容とポイント

高齢者虐待防止法の主なポイント

養護者(家族など)による虐待施設職員による虐待の両方が対象

・市町村は通報窓口を設置し、虐待対応を行う義務

誰でも通報できる(匿名可)

虐待防止のための養護者支援を推進

通報義務と守秘義務

・介護職員には「虐待を知ったら通報する義務」があります。

・通報したことによる責任追及は原則ありません。

虐待防止のためにできること

チームケアと多職種連携

看護師、ケアマネジャー、リハビリスタッフとの連携

高齢者の変化をチームで早期にキャッチする

スタッフ教育と心のケア

虐待防止研修を定期的に実施

ストレスチェックやメンタルケア体制の整備

家族支援と地域資源活用

介護教室や相談会の開催

地域包括支援センターとの連携

早期発見ポイント

不自然な打撲や骨折

表情のこわばり、不安な態度

異常な体重減少や脱水症状

虐待が疑われる場合の対応方法

通報・相談先

市区町村の高齢者福祉課

地域包括支援センター

介護施設内の相談窓口

緊急時は警察(110番)

通報後の流れ

市町村による事実確認

必要に応じた介入措置(介護サービス提供、保護)

心構え

虐待の加害者を一方的に責めず、「支援が必要な家族」としてサポートを考えることが重要です。

まとめ

高齢者虐待は、私たちすべての社会人が向き合うべき問題です。
「小さな異変に気づく力」「声をあげる勇気」「支援の輪を広げる努力」が、虐待の芽を摘み、高齢者の尊厳を守ることにつながります。

また、日常的に行なっているケアが「不適切なケア」なのか?と一度立ち返ってみるのが大事なのだと思います。

みんながやっているから、時間がないから、養護者が楽だからと高齢者の尊厳を無視し不適切なケアが虐待の芽に繋がってきてしまうのだと思います。

介護職、家族、地域が手を取り合い、すべての高齢者が安心して暮らせる社会を目指しましょう。


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櫻訪問リハビリテーションでは、高齢者施設のご入居様や施設様の個別リハビリテーション、施設サービスの向上のお手伝いをさせて頂きます。通常のリハビリテーションに加え、痛みの緩和に対してのマッサージやストレッチのみでもご利用可能です。詳しいご説明やご相談はお気軽にお問い合わせ下さい🙇‍♂️


【引用・参考文献】

1)厚生労働省『市町村・都道府県における高齢者虐待への対応と養護者支援について』(平成30年)

2)世界保健機関(WHO)「高齢者虐待に関するガイドライン」

3)兵庫県福祉部『高齢者虐待防止法の概要』

4)認知症介護研究・研修仙台センター『介護現場のためのストレスマネジメント支援テキスト』

5)弁護士法人かなめ介護研究会「介護現場の高齢者虐待とは?種類や発生原因、適切な対応方法を詳しく解説」