高齢者の重度内反尖足拘縮に対するリハビリテーション戦略
リハビリ2025-09-24

櫻リハの櫻本でございます🙇♂️
さて、今回は「高齢者の重度の内反尖足」についてです❗️
高齢者における重度の内反尖足拘縮は、立ち上がり困難や転倒リスク増大を招くだけでなく、足部アライメントの崩れによって疼痛や二次的な関節障害を生じやすい状態です。手術や装具を用いない conservative management が求められる場合、リハビリによる戦略的介入が不可欠です。最新の知見を踏まえ、評価・介入戦略を多角的に整理します。
内反尖足の問題点
◯骨・関節アライメントの崩れ

・内反尖足が持続すると、距骨下関節(距骨・踵骨の不整列)、立方骨の内方偏位、舟状骨の回内変形が進行し、足底アーチが過度に緊張。
・前足部外転変形や中足骨頭への過荷重が起こり、胼胝や疼痛を助長します。
◯機能的障害

・足趾背屈制限により踵接地が困難 → 前足部荷重による転倒リスク
・足底腱膜や長母趾屈筋・後脛骨筋の短縮による足底の硬化と柔軟性喪失
・立位・歩行時の前方への推進力不足とバランス障害
評価のポイント
リハビリを行う前に、以下の観点で評価を行うことが重要です
足根骨アライメント:距骨下関節可動域、踵骨の外反・内反角度、舟状骨突出度
足趾・足底の拘縮:足底腱膜の緊張度、足趾背屈の可動域制限
荷重評価:立位・座位での足底接地範囲(前足部荷重の偏り)
代償動作:膝・股関節での過伸展や体幹前傾の有無
リハビリ介入戦略
1.TES(経皮的電気刺激療法)

・TESはNMESと異なり、随意運動困難例において筋緊張抑制や拘縮改善を目的に使用されます。
・下腿前面(前脛骨筋領域)に低頻度刺激を行うことで、背屈方向の促通と拮抗筋(下腿三頭筋)の抑制を図ることが可能です。
・高齢者で自動背屈困難なケースでは、TESが拘縮改善・関節可動域維持の補助療法として有効です。
2.振動療法(Vibration Therapy)

◯理論的背景
筋紡錘に対する高頻度刺激により、Ⅰa求心性線維の興奮→拮抗筋抑制を誘発。
足底腱膜や長母趾屈筋などの過緊張を抑え、背屈方向の可動域拡大を助ける。
◯臨床応用
足底に局所振動を与えることで、過緊張の抑制+体性感覚入力を改善。
TESやストレッチと併用するとより効果的。
3.徒手ストレッチと関節モビライゼーション
ストレッチ

・下腿三頭筋・後脛骨筋・長母趾屈筋・足底腱膜に対する持続伸張
・持続時間は 30秒〜60秒を複数回 が推奨(急な強制は筋緊張を高めるためNG)
モビライゼーション

・距骨下関節の外反方向への滑り
・距腿関節の後方滑り誘導(背屈を出すため)
◯骨アライメントの修正を狙い、内反・尖足の骨性ロックを緩めることが目的
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4.荷重位アプローチ

・立位保持や座位荷重で足底に圧刺激を加えることで、背屈方向への伸張反射を利用
・立位保持が困難な場合 → 足底板やクッションを利用し補高、または座位で体幹前傾して背屈を誘導
👉 荷重による骨アライメント矯正+固有感覚入力が得られる
5.シリアルキャスティング/スプリント
・夜間のみのソフトスプリントや包帯固定、タオル巻き上げ法も一時的に有効
6.運動学習・代償抑制アプローチ
・タオルギャザー運動(ただし内反助長リスクあり → 外反方向を意識)
・足底接地練習:セラピストが外反位を保持しながら立位練習
・視覚フィードバック(鏡や目視)で足部アライメントを患者に意識させる
◯高齢者では「筋緊張抑制」だけでなく「正しい動作パターンの再学習」が重要
まとめ
高齢者の重度内反尖足拘縮では、足関節のみならず足根骨のアライメント崩れ・足底腱膜の過緊張が複合的に関与します。
ストレッチ・モビライゼーション → 関節可動域改善
TES → 筋活動促通
振動療法 → 過緊張抑制・感覚入力改善
荷重位アプローチ → 骨アライメント修正・固有感覚刺激
簡易的固定 → 筋短縮リモデリング
運動学習・代償抑制 → 実際の動作につなげる
これらを組み合わせることで、 conservative management においても拘縮進行の抑制と機能改善が期待できます。
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【引用・参考文献】