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高齢者の便秘対策ガイド|原因・薬・運動・マッサージで自然なお通じを取り戻す

リハビリ

櫻リハの櫻本でございます🙇‍♂️

さて今回は「高齢者の便秘症」についてです❗️

高齢者の便秘は「加齢でよくあること」ではありますが、放置すると腹痛・食欲低下・QOL(生活の質)の低下、ひいては循環器疾患・脳血管疾患のリスク上昇につながるという報告があります。実際、「排便回数が4日に1回以下」のような頻度の便秘状態は、これらのリスクと関連があるとされます。

このため、最新の「便通異常症診療ガイドライン2023」では、高齢者を含む慢性便秘症の評価・治療フローが明確に示されています。この記事では、ガイドライン内容を基に、原因・薬物療法・運動・マッサージなど、多角的な便秘解消策をご紹介します。

高齢者の便秘の原因

高齢者で便秘が起きやすい背景には、複数の要因が重なります。

◯腸の蠕動運動の低下:加齢により腸の筋層・神経が弱くなることが報告されており、通過時間が長くなりがち。

◯腸管分泌能の低下:腸での水分分泌が減ると便が硬くなり排泄しにくくなる。

◯運動不足:歩行や体を動かす機会が減ることで、腸への刺激が弱くなる。

◯食事・水分摂取の低下:食物繊維の少ない食事、食事量の減少、十分な水分を取らないこと。

◯薬剤性便秘:高齢者は複数薬を使用することが多く、便秘を引き起こす薬(抗コリン薬、オピオイド、PPI(プロトンポンプ阻害薬)など)が併用されていることがあります。

◯排便反射・直腸感覚の低下:便意を感じにくくなること、直腸への便の貯留があっても自覚が乏しい場合。

◯排便困難型の問題:直腸肛門機能障害など、便を運ぶだけでなく出す過程で問題がある病態。ガイドラインでは「排便回数減少型」と「排便困難型」の2分類が強調されています。

薬剤性便秘の薬

抗コリン薬:アキネトン、トリモール、アーテン(パーキンソン病治療薬)

オピオイド:モルヒネ(医療用麻薬)など

PPI:タケプロン、タケキャブ(胃潰瘍、逆流性食道炎の治療薬)

知っておきたいサイン

高齢者の便秘で特筆すべき症状や見逃してはいけないサイン

排便回数の減少(週3回未満など)

硬便・兎糞状便・残便感

排便困難や肛門の閉塞感

腹部膨満感、腹痛、おならが出にくい

※血便・体重減少・貧血・急激な症状の変化など。こうした場合、大腸内視鏡などで癌や炎症性疾患の除外が必要な場合もあります。

治療・薬の種類とその使い分け(ガイドラインより)

「便通異常症診療ガイドライン2023」では、高齢者の慢性便秘症に対する薬物治療の推奨と使い分けが明らかにされています。以下が主な薬と使い方のポイントです。

薬の種類主な薬剤長所/使うべき場面注意点・副作用
浸透圧性下剤(塩類・糖類・高分子)酸化マグネシウムPEG(モビコール)など第一選択。排便回数減少型で生活習慣改善で不十分な時に使用。便を柔らかくし、腸に水分を引く作用。腎機能低下者ではマグネシウム過剰に注意。脱水・電解質異常注意。長期使用で腸内細菌などの影響も考慮。
上皮機能変容薬ルビプロストン(アミティーザ)
リナクロチド(リンゼス)
浸透圧性下剤で無効なとき、あるいは副作用や体質で下剤が使いにくい場合。蠕動・分泌を促進。嘔気など消化器の副作用。若年女性や特定薬との併用時注意。コストや保険適応の制限。
胆汁酸トランスポーター阻害薬エロビキシバット(グーフィス)腸の通過時間を改善する作用。便秘症の新しい選択肢腸への刺激、下痢などの副作用。すべての患者で使えるわけではない。体調・他薬とのバランスで選択。
刺激性下剤センノシド
ピコスルファート類等
頓用で使う。急性の排便促進を目的とするが、常用するものではない。ガイドラインでは”オンデマンド(必要時)治療”として位置づけ。長期使用で耐性・依存性・腸の神経変性リスクあり。腹痛やけいれんが起こることも。
外用薬・浣腸・摘便坐剤、浣腸、摘便排便困難型、直腸に貯留便があるとき、または他の手段で出ないときの補助的手段、頓用利用無理な使用は肛門粘膜損傷・不快感がある。使用頻度を抑える。

◯フローとしての使い分け

一般的な治療の順序(ガイドラインでのフローチャートの考え方)

1.生活習慣改善(食事・水分・運動・排便習慣) →

2.浸透圧性下剤などの非刺激性薬(酸化マグネシウムなど)を第一選択 →

3.上皮機能変容薬または胆汁酸トランスポーター阻害薬(アミティーザやグーフィス)を併用・変更検討 →

4.必要時の刺激性下剤・外用薬・浣腸などのオンデマンド治療

また、オピオイド誘発性便秘の場合には、浸透圧性下剤・刺激性下剤・ナルデメジンなどが考慮されます。

運動療法:動かして腸を活性化する

薬だけでなく、運動療法は高齢者の便秘対策において不可欠です。無理のない範囲から取り入れ、継続することがカギです。

◯運動療法のポイント

起き上がり・座位・立位など、ADL(日常生活動作)レベルに応じてプログラムを調整する。

腹筋・体幹筋・骨盤底筋群を使う動きが便を外へ押し出すのに役立つ。

有酸素運動(歩行など)を取り入れることで腸の活動を促す。動くことで腸内容物が移動しやすくなる。

レベル運動例
座位も自力で保持できない方 / 寝たきり近い方臥位からの足を曲げて膝を抱える運動、体幹をねじる運動、や腹式呼吸など。椅子やベッドの背もたれを使って姿勢を保つ練習。
座位が保てるが歩行が困難な方椅子座位での足踏み運動、体幹を前に倒す・体幹を左右にひねる体操、膝を抱えるまたは膝を胸に寄せる動作。
歩行可能な方散歩、軽い階段昇降、ウォーキング、体幹ねじり・腹筋運動、立位でのスクワットなど(安全配慮のもと)。

【膝抱え運動】

①仰向けになって両膝を胸の方に近づけ、5秒間静止します

②できるならお尻が浮くように反動をつけて揺り動かしましょう

※膝を抱える事ではなく、腹部が近づいて、お腹にシワがよる・力が入る事が大事です

【体幹ねじり運動】

①両腕を広げ仰向けになり、肩が床から浮かないようにして、両膝を立てたまま横に倒します

②ゆっくりと10往復くらい繰り返します

※体の硬い人は、膝を倒すと、腰・骨盤とともに肩も床から離れて一緒についてきますが、介護者などに手伝ってもらうと上手にできます

◯運動を続けるコツ

・日課に組み込む(朝・食後など定時に行う)

・家族・介護者・理学療法士などのサポートを得る

・楽しめる内容にする(運動+音楽+会話など)

マッサージ法による補助ケア

運動と薬とともに、腹部マッサージなどで腸の蠕動を刺激することは高齢者にも有効です。

◯腹部マッサージの方法

【のの字マッサージ】

①仰向けに寝るか、背もたれのある椅子に座りリラックスした呼吸を意識する(腹式呼吸)

②おへそを中心に、時計回りに「の」の字を描くようにゆっくりマッサージする(指腹でやさしく)

③2セット繰り返しましょう

※おへその下→右下腹部→おへその上→左下腹部と、時計回りに、手のひらで、1~2cmくらい、沈むくらいの力加減

◯その他の補助的な手法

・肛門周りのマッサージ(ウォシュレットや指で刺激するなど)

排便姿勢の工夫:足台を使い膝を腰より高くするなど、直腸と肛門の角度を整える姿勢

・排便習慣をつくる:朝起きて決まった時間にトイレに座る、便意を我慢しない

水分・食事・生活習慣の基本

薬・運動・マッサージが効きやすくなるための基盤として、以下は非常に重要です。

水分摂取:水やお茶・スープなどを含め、十分な水分を毎日とる。特に浸透圧性下剤を使う際は脱水を避ける。

食物繊維の摂取:野菜・果物・全粒穀物などをとり、便の量と柔らかさを保つ。

規則正しい食事・生活リズム:朝食をしっかりとる、就寝・起床時間を一定にする。

まとめ:高齢者便秘改善のために今日からできること

便秘は放っておかず、早めに対策を:便秘が慢性化すると負の悪循環(便の硬化→排便困難→便意低下など)が起こります。

生活習慣の見直しが基本:食事・水分・運動・排便姿勢。

薬の選び方は個人差あり:腎機能や薬剤併用などを考えて、適切な便秘薬を選ぶこと。

運動とマッサージを補助的かつ継続的に:無理なく日常に取り入れることが改善を持続させる鍵。

高齢者本人だけでなく、家族や介護者、医師・リハビリ職・薬剤師のチームでサポートしていくことが、快適で健康なお通じ‐生活を取り戻すポイントです。


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櫻訪問リハビリテーションでは、高齢者施設にご入居の皆さまや施設職員の方々へ、個別リハビリテーションの提供を通じて、施設サービスの質の向上をお手伝いしています。

寝たきりや座位保持が困難、歩行を望まれる方も丁寧に対応させて頂きます。

マッサージやストレッチのみのご利用も可能ですので、お気軽にご相談ください。

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